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第17話

「では、最初の課題を問題なくクリアしたところで早速次の課題といこうか」


 相変わらずせっかちな人だ。まあ、グダグダしていても仕方ないし、早くても俺としては構わないのだが、しかし冒険者学校に入学してからもこのペースでやられると厳しいかもしれない。そのへんは追々相談していけばいいか。

 新しく淹れなおした紅茶が入っているティーポットを、ゆっくりと机に置いてからセレナ教授は少し考えて、口を開いた。


「次の課題は・・・まずは三か月、冒険者学校での教育をしっかり受けること。これが課題だ」


「えっと、それってつまり普通に学校に通うだけでいいってことですか?」


「有り体に言えばそういうことだな」


 簡単というか拍子抜けというか、それって課題になるのか?学校に通うなんて当たり前だし言われなくてもちゃんと勉強するつもりなんだが。

 次はどんな課題になるのかと気を張らせていた俺は、その言葉を聞いて安心し切っていた。が、セレナ教授は少し呆れた表情をして衝撃の事実を俺に言い放つ。


「君は冒険者学校を何か勘違いしていないか?入るのは確かに簡単だが、入ってから最初の三か月、この期間での退学者、死亡者は3割を軽く超えるぞ?そのうちの半分ほどが最初の実習での死亡者だ。冒険者学校を卒業するというのは生半可な努力や覚悟では難しい。知らなかったのか」


 そんな怖い話全くもって存じ上げておりませんでしたけど!ってことは15%くらいが最初の3か月で死ぬってこと?どういう訓練したらそうなるんだよ!ていうか死に過ぎじゃない?普通はもっと安全に若い芽を育てるもんじゃないんだろうか。言うほど簡単な話じゃないだろうとは思うけど。


「まあ、魔術師がパーティにいれば死亡率がかなり下がるのだが、君自身が魔術師だしそこはいいだろう。ちゃんとした新たな課題を与えてやってもいいが、その課題のせいで冒険者見習いとしての学習が疎かになってしまうのは私の望むところではない。私が基礎を教えることもできるにはできるが、本職には敵わないよ流石に。そういうわけでまずは冒険者学校で生き残っていくことだな」


「わかりましたよ。とりあえず三か月、ということですね。ひとまずは学校に通いながら死なないように心がけます。他に何か気を付けておいたほうがいいことはありますか?」


 何もかも知らなさ過ぎて今更不安になってきた。うちから最後に冒険者学校に行った人間は三代前とかそのくらい前らしいからな。あまり詳しい内情を聞けていないのだ。

 セレナ教授は慎ましい胸の前で腕を組んで、そうだな・・・。あっ、と思い出したように一人の要注意人物の名前を俺に教えてくれた。


「まだ現役かどうか分からないが、アマリ教授にはあまり近づかないほうがいいだろう。私が学生だった頃から冒険者学校で授業をしていたが、あの人は昔から結構な変人だった。何か妙なことを手伝わせてきたりするからな。後は・・・気の合う仲間を見つけることも重要だ」


 セレナ教授に変人だと言わせるアマリ教授とは何者なんだ・・・。出会って数分後に目玉をフォークで刺そうとするレベルよりももっと上ってことだよな?とんでもなく危ない人だろう。死んでも関わりたくない、というか関わったらむしろ死にそうだ。

 俺は心の中で絶対に関わり合いにならないと誓って、教えてくれたセレナ教授にお礼を言った。


「今日のところはひとまずこの辺りでいいだろう。冒険者学校の入学式には私も顔を出す。お前が入学するというのもそうだが、久々に見知った顔に挨拶をしておきたいしな」


「なんかちょっと気恥ずかしさがありますけど、わかりました。普段の魔術の訓練や基礎体力訓練等は今まで通りでいいんでしょうか?」


「それについては明日、簡単に教えてやろう。他にも事前に教えられる冒険者としての基礎知識等も時間を見つけて教えてやる。昼過ぎまでそれをやって、その後に君の部分強化の研究をさせてくれ」


 俺はしっかりと頷いて、譲り受けた宝石箱を手に持って席を立った。

 昨日と同じように玄関まで見送ってもらい、また明日来ます、とセレナ教授に伝えて家を後にし、宝石箱を落とさないように大事に抱えながら自分の家へと帰った。


 とりあえず、三か月間は本当に基礎知識の補助的なことを教えてくれるだけで、何かのクエストに同行してモンスターを狩ったり、何かを採取したりということはないようだ。走り出したら止まらない、みたいなイメージが強かったけれど、そこはしっかりとペース配分を考えてくれているようだ。流石A級冒険者ということなんだろうか。


 いつも通り少し騒がしい食卓で夕食を済ませ、自室に戻った。机の上に置いてある宝石箱を見てセレナ教授の言葉を思い出した。

 そういえば所有者登録をして解錠呪文を設定しなきゃいけないんだったな。

 こういうのは俺はあまり悩まないタイプだ。とりあえずテキトーに決めてしまう。気に入らなければ後から変えればいいだけの話である。


 宝石箱には"開けゴマ"を解錠呪文に設定して、所有者登録を済ませてしまった。

 明日もセレナ教授の家に行く。あの人は一緒にいるだけでなかなか面白い。次は何を教えてくれるのだろう、と少し楽しみにしつつ俺は眠りに入るのだった。

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