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コトバのまにまに!  作者: 夢猫 RAR
5/7

第5文 無知

前回までのあらすじ。



「ちょっとお手伝いしてくれる?」



しっかりしなきゃ。

私は今、「お姉ちゃん」なんだから。

ノアくんを連れて来たのは、洗濯物がズラリと並ぶ一室。


さっきまでの空気を変えるにはとてもいい場所だ。


「マント、流石にもう乾いてる頃かなと思って」


私の言葉にノアくんは目を輝かせた。


ハンガーにぶら下がった布に触れてみると、湿っている様子はない。


よし。ちゃんと乾いてる。



「ノアくんには乾いた洋服をハンガーから外して、ここに置いてほしいんだ〜」


一室の床の一部を指差してそう説明すると、相手はコクコクと頷いた。





作業開始。


ノアくんは短い背丈で精一杯つま先立ちして洗濯物を掴むと、ハンガーまで根を伸ばし、手際良くずらして服を落とす。

一着、また一着。指定した床まで丁寧に持って行った。


私はというと、洗い終わった洗濯物を干す作業。

重いデニム生地の服の下でわたわたするノアくんを助け、こちらも一着、また一着。ほつれや穴が無いか確認しながら干していく。




15分ほど経った頃だっただろうか。

ノアくんが手伝ってくれたおかげで、結構早くその作業は終わった。


勿論服をたたむまで。



「おー! 早く終わったね! 手伝ってくれてありがとう!」


さっきまでとはまた違う洗濯物がズラリ。

その光景を見て、達成感が湧き上がった。


いぇーいとノアくんとハイタッチした後、本題に入る。


「さてノアくん。いつまでマントにくるまってんの」

『これボクの あげない』

「いや……それもたたもうと思ってたんだけど……」


最初に訪問に来た時を再現しているのかわからないけれど、なんだか「あとー時間〜」と呟きながら布団に籠った時の優命と重なって吹き出しそうになった。


『いいにおい』


周りにお花が咲きそうなほんわかした表情を浮かべ、今度はこっちに寄ってくる。


『おんなじにおい これが"おそろい"?』

「ん、ん〜? ちょ〜っと違うかもぉ」


スンスンと呼吸音を鳴らしながら擦り寄るノアくん。

これは少し恥ずかしい。


それにしてもどうしようか。

この様子じゃしばらくマントを離してくれそうにないし……。それは良いとしてもくるまったままというのはノアくんが自分で踏んで転びそうだし……。




あ、そうだ。



「ほら。マント貸して」

『あげないんだもん』

「ケチんぼー。お姉ちゃんいいこと思いついたのに〜」


あからさまに不貞腐れた態度をとってみると、むすっとした表情でマントを脱いで手渡してきた。


ありがとうと笑いながら長方形のその布を受け取り、短い辺を半分、また半分と細長く折り曲げていく。

ノアくんの不思議そうな目に少し悪戯心を擽られた。


「はい! ノアくん、こっちへおいで」


こちらに一、二歩近づいたノアくんの首元に細長く折り曲げたそれを巻き付ける。

まぁわかりやすく言えば、マフラーみたいな感じにしてみた。

これならマントを離さなくていいし、怪我の心配も大分減る。

しかも、布そのものが大きいからこれまでネックウォーマーで隠してた口元もしっかりカバー出来た。



うん。我ながらグッドアイディア!



さて、反応は……?


『すごい! すごい! ユウキおねえちゃんは まほうつかいなの!?』

「違うよ!?」


ぴょんぴょん跳ねながら大喜び。

外国人のリアクションが少々オーバーなのは聞いていたけれど、ま……まさかここまでとは。


それともただ単に日本人が仏頂面で無愛想なだけかな?



動きに合わせてなびく布が面白いのか、楽しそうにくるくる回るノアくん。

その姿はまるでふわふわのスカートを買ってもらった少女のように見えた。




ん……? ……少女……??




んん? あれ?






ノアくんの性別って……どっちだ……!?



〜・~・~・~・~・~・~・~・~・~



まずいな……。

ノアくんがもし女の子だったらノアくんは昨日男の子と同じ部屋で寝ていたことになるし、訪問時から抱き抱えられてるし、てか思いっきりハグしてたし……。



待って。




出会ってすぐ全裸見られてんじゃんノアくん!?



えぇーと確か、気を失っててぐったりしてるけどこれまで見たことない身体だったからまず何をしたらいいかわからなくて、調べようとしてマント剥ぎ取ったんだったよね。


まったくもう〜。誰だよ布剥ぎ取ってまで調べようなんて言った奴ぅ〜。






………………………………。



私だ……。




言った記憶あるもん……もうイヤ……。

今考えてみたらとんでもないミラクル☆ミス……。


何が「調べないと」だよ……過去の私を絞め殺したい……。

あ、火葬でお願いします。




というか、植物に性別というものがあるのかどうか……。

ノアくんだけ例外で〜とかありそうなのが怖いなぁ〜。


『ユウキおねえちゃん?』


おっと。

そうだ。

本人なら目の前に居るじゃないか。

幸い実験材料も豊富だ。


確かめるなら、今しかないよね。

調べるしかないよね。

私悪くない。

異論は許す。



「ノアくん。これとコレ、どっちが好き?」


シンプルな優命のTシャツと私がよく着ているヒラヒラのチビTを、ハンガーにぶら下げたまま手に取って問いかける。

ノアくんはスケッチブックに大きな矢印を描いて、胸の前に構えた。


ふむ。優命のTシャツか。


「じゃあ、これとコレは?」


優命のスキニージーンズと、私が時々使っている長袖のワンピース。

今度はスケッチブックを逆さまにして、さっきとは真逆の方向を指した。


うん。これは私のワンピースだね。


「よぉ〜し! どんどんいくよノアくん!」


ノアくんも楽しいのか、笑顔でコクコクと頷いた。



〜・~・~・~・~・~・~・~・~・~



何十分くらい経ったかな。

ぶっちゃけ実験とか抜きで結構楽しくて夢中になっちゃった。


結果は五分五分。

思考は中性的だと捉えていいかも。

で、驚くことに、ノアくんがどんな服が好きかも分かってきた。


全体的に、面積が大きい方が好きみたい。


特に、フードがある服は必ず指してた。

どっちもフードの服っていうのも試してみたんだけれど、裾や袖のわずかな違いで長い方を指してたと思う。


その次に、動いた時に揺れが映えるヒラヒラふわふわな服も好みみたい。

タイトスカートとフレアスカートで聞いてみたら、迷わずフレア。

でもロングスカートとそのフレアスカートで試してみると、少し見定めてロングスカートだった。


あくまでも、身体を隠すのが最優先……ってことね。


本人は無意識かもしれないけれど。


あ、色の好みなんだけど、結構何色でもいいみたい。

見慣れた緑色かな〜とか思ってたけど、この予想もハズレだね。

私の直感も推理も、あんまアテにならないなぁ。


知ってたけど。





というか聞いて?


結局性別分かんなかった。


メインが無い。


調べた意味。






「姉ちゃん、ノア、ただいま」

「あ、優命。おかえり」

『おかえりなさい』


ドアを開いた音と共に、愛するもう一人の家族の声。

今日も無事に帰って来てくれたお礼に、おやつおやつ。


「あれ? ノア、そのマフラーってあのマントか? 綺麗だな」

『ユウキおねえちゃんが まほうをつかったの』

「魔法かあ。俺も出来るぞ」

『ほんと!?』

「ここにコインがあるだろ?これをな……こうやって隠して……」


手品か。確かにノアくん楽しんでくれそう。


そんなことを思いながら、私はお菓子を取りに部屋を出た。



〜・~・~・~・~・~・~・~・~・~



ご飯食べて、お風呂入って、三人でゲームして、おやすみなさい。

今日も平和でした。

退屈なくらいに。


でもきっと、このままがいい。

退屈なくらいで丁度いい。

平和って多分、退屈なものだから。




………………。


ごめん、お姉ちゃん嘘ついた。


今日判明したノアくんの能力。

今、私の脳内はそれを悩みと捉えていた。



時計の針が十を過ぎた。

再び静まった部屋の中で私は思考を巡らせる。


厄介者を受け入れたとは思ってない。

だってあの子はもう家族だ。

あの子がここに居る理由なんてそれだけで充分過ぎる。

そうじゃない。

そこじゃない。



問題は、「あの子の能力に制限をかけないといけない」ということ。



ノアくん自身の能力を自由にさせてしまうと、必ずどこかで支障がでる。

精神状態なんて脆くて繊細なものを相手にしているのだ。問題がない筈がない。


だが、あの時咄嗟に口をついた「危険な時だけ味方に使う」という制限は、少々あやふや過ぎた。

危険のボーダーラインなんてそれぞれ。

個人差があり過ぎる。



じゃあ、それ以外にどう言えばよかった?



あの能力は便利だ。

ノアくん以外に、適合者が居ないくらいに。

そして優しいあの子なら、私の言ったことを聞いてきっと無闇に使わない。

でも。



私が縛っていいものだったのか、未だに判断がつかない。



「あっはは」



嫌になる。

こんなのでくよくよ悩んでる自分も。

あんな能力を持たせた世界も。







ガチャリ。

ドアが開く音がした。

その先には、私の家族がいる。

少し跳ねた髪。

動く度に揺らめくアホ毛。

つっているけれど、そんなに鋭く見えない目。


「姉ちゃん」


私を呼ぶ声。

いつもなら笑顔を向けるその声に、思わず背筋が凍った。


「ど、どうしたの優命……何か……忘れ物かな?」


そうだ、ノアくんだけじゃなかった。

どうしよう。

どうしよう!


「姉ちゃん」

「わっ!?」


眼鏡を外した弟が、後ずさった私の手を掴む。

この時の優命はとても苦手だ。



「隠し事、してるだろ」



何もかも、見抜かれてしまうから。


続く

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