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神様のアンケート  作者: ありさと
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00.創世

これは、神様が今の地球を創る物語。

 一つの銀河を管理している神様は、とても疲弊していました。

 それは管理している星々の内外で実に様々な争いが繰り広げられ、衰退を繰り返し、それでも歴史に学ばずに同じ事を繰り返している生命たちに頭を悩ませていたからというのもあります。その諍いが原因で、せっかく美しく創造した星々は幾つも滅んでしまっていました。


「何という愚かな・・・」


 神様にとって、その諍いの原因となったものがとても矮小な事柄であるから、神様にはどうして無駄な争いを続けるのか理解するのは難しい事だったのです。

 しかしそんな神様にとって、癒しとも呼べる知的生命体も存在していました。


 その知的生命体には、体を守るための皮膚や体毛は薄く柔らかくて頑丈ではなく、獲物を捕らえる為の牙や爪も攻撃力はなかったのです。そして信じられない事にその知性を争いではなく、生活を豊かにするために活用していました。


「・・見ているだけで癒されるな」


 その生命体はとてもか弱く、他の種族に敵になり得るとさえ思われていません。その為、よく捕まえられては奴隷や使用人として他の種族の元で過ごしている者が多くおりました。

 時には酷い扱いをする種族もいたが、始まりはどうであれ、概ね友好的な関係を築いているように見えたのです。ほとんどの種族は多種族との共存というものが不可能でありましたが、その種族だけは存在する殆どの種族とそれぞれが共存していました。


「本当に、いつの間にかいたんだよなぁ・・」


 神様であれど、すべての物事を把握しているわけではありませんでした。

 かの種族は、気付いた時にはそこにいたのです。


「人間・・」


 人と人の間に入れる者。神様はかの種族をそう名付けました。

 人間が他種族と他種族を繋ぐ事例が極稀にではあるが存在したことも、その名を与える一因でした。


「人間は本当に面白い進化をしたな」


 進化の過程を調べてみると、ある種の動物が祖先である事が分かったのです。

 そしてその祖先を元とする種族がもう一つある事も。


「元を辿れば猿人類と同じ祖先をもつのか」


 言われてみれば似ていないこともない、神様はそう思いました。しかし言われなければ、とてもじゃないが同じ祖先を持つとは想像もできません。


「一方は武器となる肉体をすべて捨て、もう一方はその武器を極限にまで高めた進化をしたのか・・」


 猿人類は脚力、腕力が共に強く、手足も器用で知能も高い。口には鋭い牙が上下4本ずつの計8本備わっており、現在行われている宇宙戦争の中でも上位に入る強者です。接近戦も遠距離戦も強い、いわゆるオールラウンダーという存在です。何をさせても一定の水準以上に達するのです。


 人間は個々の武力が低い分、親和性が高い。害たり得ない為に馴染みやすいのだろう、神様はそう結論付けました。


 その神様は殊の外、その種族を気に入ってしまいました。それゆえ、知的生命体がまだ誕生していない他の星にその種族の始祖を送り込み、繁栄させてみようと考えました。

 目を付けたのは、遠い宇宙の端に近い場所にある、青々とした小さな星です。そこは生命の坩堝のような星で、山のように大きな生命体から目に見えない程に小さく、意識を持っているのかさえ定かではない生命体まで、実に多くの命が多岐に渡る進化を遂げていました。


「しかしこの種族を入れるにはいささかあの山のように大きな生き物が邪魔だな」


 神様のお気に入りの種族はそう大きなサイズではありません。大人になっても1.5メートルから3メートルとその程度です。平均的には2メートル程度。対してその星での巨大生物は10メートルを軽く超す。しかも肉食が多く、とてもじゃないがお気に入りの種族と共存できそうにもありません。


「環境を変えて絶滅させてしまおうか・・」


 神様はまず初めに重力を変えようと火山を噴火させました。重力に変化をもたらす程の威力というのも相まって、噴火はそれはもう巨大なものになりました。噴火により降り注いだ粉塵や岩は生命を蹂躙し、それにより多くの命が失われました。

 神様が心配していた種族もそれにより多くが命を失っていた。その後火山より発生している雲により日差しが遮られ、地上には氷河期が訪れていました。噴火より難を逃れていた生物もそのほとんどが寒さと飢えの中、その命を散らせていきました。


 噴火が落ち着いた頃から、神様が望むように少しずつ重力が増していきました。小さな生物程、その変化には気付くことができません。しかしそれはその体躯が大きい程に実感できるものでした。体が重く、以前のように上手く狩りをする事が出来なくなったのです。

 巨大な生命体はその体を小さくする事により環境に適応していきました。それと同時に、大きさだけを優位としていたその進化形態から徐々にその姿も変貌を遂げていきました。


 そして環境がようやく落ち着いた頃、神様はお気に入りの種族をその星に投入したのです。


「ここにはお前達を虐げる種族はおらん、好きに生きよ」


 流石に自己が確立した知的生命体をいきなり投入するのは、本来ある生態系を大きく乱しかねないものです。神様は人間と名付けた種族の祖先をその星におろしました。


 人間の暮らしはとても穏やかなものでした。

 基本的には集団での狩猟と自生している野草や果物が彼らの主食となった。遊牧を基本とする集団もいれば、より日々の暮らしを快適に過ごせる土地に定住する集団もいました。

 それぞれの暮らし方から基本に変化が起き、農耕をする集団も現れます。それぞれの集団の間では交流が始まり、人間と名付けられた種族は至って平和的な社会を築いていきました。


「もちっと文明レベルが上がらんかの」


 平和の代償は文明です。

 争いのない平和な世界は向上心に乏しく、行われるのは現状維持が殆どでした。神は少々上昇志向の強い傾向にある類似の種族を投入する事を決意します。

 それは神の思惑通りでありましたが、あまりにも一方的な侵略に神は頭を抱える羽目になるのでした。

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