表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

満喫

 《グラディエーター》で7年間暮らす。

 そう縛りを設けた俺は、ボートから降り力強く地を踏みしめた。

 二匹の猫達は恐る恐る歩き出した。

 海に転落しない限り大丈夫だろう。


 島の北側に小高い山があり、草木が生い茂っていた。

 台風、津波に備え、どうしても山の頂上に家を作りたい。

 そのためにはまず山に登る道を作らなくてはいけない。


 その前にやるべき事がある。

 今夜の寝床作りだ。

 山肌に近く海岸から少し離れた場所に、バナナの葉で編んだテント小屋を作った。


 海で遊び疲れた休憩所にもなる。

 中にもバナナの葉を敷き詰め、家から持って来たマットを置いた。

 俺は大した奴だと自分で自分を褒めた。


 猫達が匂いをかぎながら近寄る。

 多分トイレか餌探しだろう。

 ここにいると野生動物に見えて来るから不思議だ。


 テント小屋からそう遠くない茂みに、トイレを作る事にした。

 作ると言っても穴を掘るだけだ。

 猫用には砂をこんもりと積んだ。


 後は食料だ。

 缶詰をいくつか持って来たが、早速釣りでもしてみるか。


 荒らされていない自然が残る海では、入れ食い状態で魚が釣れた。

 だが、見た事もない派手な色合いの魚ばかりだ。


 小さいのを砂浜に投げると、ピチピチ跳ねる魚に夢中で猫が遊び出した。

 食べ物という感覚がないようだ。

 ま、そのうち腹が減れば食うだろう。


 日が傾くと一気に海風が冷たくなった。

 厚手のトレーナーを来て火をおこす事にした。

 マッチとライターは命の次に大事な物。

 大量に持ってきたが失くすと大変な事になる。


 落ちた枝を拾い集め火をつけると、サバイバル!という感じになる。


 後は魚を焼けばいい。

 持ってきた金網を石で高くした。

 ぱちぱちと焼ける音だけが響いた。


 いけない、暗くなる前にランプと懐中電灯を探さないと。

 テント小屋に運んだリュックから取り出す。

 持参したペットボトルの水、箸も出した。


 見渡す限り海が続き、波の音と潮風。

 やがて夕日が海と空をオレンジに染め、焼けた魚を頬張る。

 海水の塩気がちょうどいい。

 その時改めて、この島を買った事が間違いではなかったと気付かされた。


「グラディエーター!万歳!」


 大声で叫んでも、人目を気にする必要はない。

 マイケルとキャメロンも魚を上手く食べたようで、手で口の周りの掃除をしている。

 猫も結構気にいっているのかも知れない。


 日が落ちると、全てが暗闇に包まれた。

 砂浜に寝転ぶと手で掴めそうな満天の星空。

 この全てが俺のものだ。


 火が消えると、静かに波の音だけになる。

 グラディエーターと俺が一体化したような錯覚さえ覚える。


 すぐに片付ける必要はない。

 なぜなら誰もいないのだから。

 ペットボトルの水を飲み、テント小屋に入った。


 毛布を腰まで引き上げると、気持ちいい風に眠気を誘われる。

 マイケルとキャメロンもやって来て毛布にくるまった。


 俺は今まで味わった事の無い幸せを感じながら眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ