別れ
雨がポツポツ降ってきた。
いきなりザッーと降るスコールとは違った。
そこかしこで稲光が起こった。
雲は風が強いため速く動いているが、分厚いグレーの雲が何処までも続いている。
ヤバい!
気象情報はないが、これは台風だ。
皆を呼んで家の中に入れた。
雷の音が大きくなり、風も強くなって来た。
「ひまわり、雨戸はないのか?」
「ないよ。でも必要ないの」
皆でリビングに集まって外を警戒した。
「飛ぶような物がないか見て来るよ」
そう言って激しくなった雨風の中、バケツや農具などを拾いながら家の中に入れた。
するとココアが走って出て行った。
「中に入れ!ココア!」
ココアは雷に怯えながら畑に向かった。
あとを追って走った。
ココアはビニールを野菜に被せていた。
「何してるんだ?!危ないから中に入れって」
俺の言葉も無視して、必死で野菜を守ろうとしている。
「ダメになっても、またすぐ出来るんだから、放っておいてもいいじゃないか!」
「サリーは何もわかってない!」
ココアはずぶ濡れになり、涙か雨か分からない濡れた顔を歪ませ叫んだ。
「この子達は生きてるんだよ!必死に生きてるんだよ!」
今度は確かに涙声だった。
その声を聞きつけたのか、みんな飛び出して来た。
艶姫は木を切り、ひまわりは今ある木材で畑に囲いを作り出した。
琴と桜さんはココアを手伝った。
生きている?
あ、マイケルとキャメロン!
俺は海岸に降りて行き、二匹の名前を呼んだ。
琴は慌てて付いてきた。
「琴、今日はいいからみんなと一緒にいてくれ!頼む、ニワトリ達も心配なんだ」
琴は決まりを破る事に躊躇したが、頷き階段を上って行った。
マイケル達の名前を呼びながら、島を一周回り林の中も入ったが二匹の姿は無かった。
諦めて頂上に行くと、畑は見事に木で覆われ小屋も雨風をしのげるようにしていた。
夜になっても雨風は激しく、落雷が鳴り響いている。
リビングは当たり前だが真っ暗になった。
「サリー、灯りが必要だよね」
真っ暗の中ひまわりが言った。
「そうなんだけど……家の中に火は持ち込めない」
「まだアレイボールはあるの?」
「んー中が二個大が一個」
「そう、なにかの時にそれは置いておきたいよね」
「暗くなれば寝ればいい。さっ、みんな寝よう」
手探りで皆部屋に行き、その日は休んだ。
次の日の朝、昨日の暴風雨はウソのように晴れ渡っていた。
外に出て見ると被害はないようだった。
みんな仕事を再開していた。
「サリー、おはよう!今朝はホットケーキを作るよ!」
昨日の涙はなく、元気なココアがいた。
微かだが猫の鳴き声がする。
俺は必死で探し回った。
声は家の軒下からだった。
名前を呼んだが、なぜか来ない。
狭いが潜り込める。
ほふく前進で鳴き声の方に向かった。
琴も可哀想に付いてきた。
やっと声の所までやって来た。
それを見て絶句した。
マイケルとキャメロンはずぶ濡れになり横たわっていた。
その横に三匹子猫が冷たくなっていた。
微かに鳴いていたのは一匹の子猫。
キャメロンのお乳を必死で探していた。
突然、号泣した。
俺は、こいつらとサバイバル生活を送るはずだったんだ。
アレイが来た事により、こいつらの存在が薄くなった。
ココアは命を大切にしているのに、俺は……。
琴もやって来て、その状況を見た。
そして静かに泣いていた。
一匹の子猫を大切に抱き、家に連れ帰った。
体がまだ濡れていたので拭き、乾かした。
「子猫!すごーい!」
それを見たココアが歓喜の声をあげた。
琴以外のアレイ達はマイケル達の存在すら知らない。
悲しい話はせず、黙ってココアに手渡した。
「ココア、ミルクをやってくれないか?」
「わかりましたです~」
ココアは嬉しそうに抱きしめていた。
その後マイケル達をバナナテントの近くに連れて行き、墓に埋めた。
「すまない……」
静かに手を合わせた。
琴と二人でいつまでも泣いた。
ある日ひまわりが海岸にやって来た。
「サリー、完成したよ~。見て見て」
三人で家に行った。
家の前にはベンチがあり、畑の前にはテーブルと丸太椅子があった。
家の中に入るとリビングにソファがあり、黄色と白のチェック柄だった。
「色は大丈夫ですか?」
桜さんは恐る恐る尋ねた。
「最高だよ~、桜さん」
カーテンもお揃いで凄く良かった。
ダイニングの広いテーブルに椅子のクッションも合わせてあった。
アレイ達の寝室もベッドがあり、オレンジのカバーがかけられていた。
二階の寝室はブルーを基調に、落ち着いた雰囲気になっていた。
ダブルベッドはとてもふかふかだった。
「ありがとう、凄いな!」
「まぁ、嬉しい言葉だわん~」
艶姫とひまわり、桜さんは三人並んでとても嬉しそうに、にこやかな顔をしていた。
「ぇ……、もしかして……」
俺はドキドキしながら言った。
「うん、寂しいけど仕事が終わったから帰るよ」
ひまわりがそう言った。
「三人いっぺんに?」
「そうなるわね~」
艶姫が寂しそうに呟いた。
俺は一人ずつハグをし、お礼を述べた。
三人は手を振りながら、ボーイと同じように消えた。
後に残されたのは琴、ココア、そして一匹の子猫。
「ねぇ、サリー、この子の名前はなぁに?」
沈黙を破ってココアが明るく聞いた。
「まだ付けてないんだ。よかったらココア付けてよ」
ココアは子猫の顔をじっと見て考えている様子だった。
その顔は子猫同様、とても可愛らしかった。
「ヌケです!この子は目が離れてヌケてるようだからヌケです~」
そう言い猫と一緒にクルクル回った。




