生徒会役員の紹介(後編)
「はい、じゃあ今日の授業はここまで。」
「起立、気を付け、礼。」
4時間目の授業が終わり、昼休みとなった。クラスで持参の弁当を食べる者、教室から出て食堂に足を運ぶ者などそれぞれの休み時間を堪能する。そんな中で翔が聖夜を、
「聖夜、今日も屋上で飯食おうぜ。」
と、誘う。屋上は基本的に鍵がかかっていて生徒は立ち入り禁止だ。しかしとある事情からピッキングを極めた翔にとっては、学校の旧式の鍵を開けるなど朝飯もとい昼飯前なのだ。
「もっち!今日も鍵開け任せたぜ。」
聖夜は聖夜でそのことを注意どころか、一緒に屋上で昼飯を食べる始末である。
「よし、任された!」
そう言って屋上に向かおうとする2人。しかしそれに待ったを掛けた者がいた。
「こら、聖夜。今日は定例会の日でしょうが!」
美和子である。
「げっ!忘れてた。よし翔、急いで屋上に…。」
美和子の言葉を無視して、屋上に逃げようとした聖夜だったが、翔は既にそこにはいなかった。
「あいつ、逃げたな!」
「「逃げたな!」じゃないわよ!さ、早く生徒会室に行くわよ。」
美和子に急かされて、渋々といった表情で生徒会室に足を向けたのだった。
☆
2人が生徒会室に入ると全役員がすでに揃っていた。
「みーちゃん遅いよ!どうせまた聖夜んとイチャイチャしてたんでしょ?」
開口一番にそう言ったのは聖夜と美和子の幼馴染みで美和子の1番の親友である高坂陽乃である。美和子に話しかける顔はまさに駄々っ子という言葉が良く似合う。待たされるのが嫌いなタイプだ。
「ごめんごめん。謝るからその呼び方はやめて。」
美和子は顔を引き攣らせて懇願する。
「別にみーちゃんでもいいじゃないか。なぁ陽乃。」
元の原因である聖夜はぬけぬけとそんなことを言う。
「そーだよ。みーちゃんはみーちゃんで聖夜んは聖夜んなんだよ。」
美和子の願いは聞き入れられそうになかった。
「そう言えば陽乃、今日の朝の片付け来てなかったよね。」
「陽乃、朝は眠たいからいつも遅刻ギリギリなんだよ。無理な要求はしちゃダメなの。」
美和子としては陽乃に反省を施そうとしたつもりだったのだが、完全に開き直られていた。
「整美委員長なんだから片付け来いよ。俺がさぼれなくなるだろ」
聖夜は自分が楽をするためならば何だってするタイプだった。
「聖夜んがそう言うなら、今度から気をつける。」
陽乃は聖夜の言うことについては素直に従うようだ。美和子はそれを見て
「私って陽乃の親友よね?」
と自問自答している。
「朝いなかったって言ったら薫もいなかったな。」
聖夜によって話を振られたのは黛薫である。男子とも女子ともとれる顔で、名前が女子っぽいので薫ちゃんとよく呼ばれているが、実際は男子である。
「すみません。僕、今朝は病院で検査があったんで行けませんでした。」
小さい頃から病弱な薫は定期的に病院で検査を行っている。そのこともあって内気な性格だが、聖夜に無理やり引き込まれる形で役員となった。役職は図書委員長だ。
「ならしょうがねえか。よし、じゃあ4月定例会始めるぞ。」
聖夜の一声で各自弁当を食べながら役員達の話し合いが始まり、予鈴がなるまでそれは続けられた。




