3のA
「起立。礼。着席。」
クラス委員の村上志穂の指示で挨拶をする3年A組の生徒達。
「よーし、出席確認するぞ。周りにいない奴いるか?」
A組のホームルームを行うのは担任の岡野慎也である。
「先生、鞘嶺と宮古野がまだ来てません。」
声を発したのは成瀬翔。聖夜の親友だ。
「あぁ、アイツらなら昨日の片付けだ。来てるから安心しろ。」
「そっすか。別に心配してないんで大丈夫です。」
もう1度言おう、聖夜の親友だ。
「他はいないか?」
先生が尋ねると、一際目立つ金髪の女子が、
「いなーいよー。」
と言った。このクラスは、男女合わせて30人で今教室にいるのは27人だ。
「おーい、どう見ても1人報告されてないぞ。」
先程返事をしたのは百道恭子で、このクラスでは女子のリーダー的な存在の1人だ。恭子は、
「いつも来てないんだから、報告しなくてもいーじゃん。」
と、生徒らしからぬ口調で受け答えをする。
「それはそうなんだがな…。」
妙に気まずい雰囲気に、クラス全体が支配される。だがそこに、
「ちーっす。遅れましたー。」
「こら、聖夜!遅れてすみません。生徒会の活動をしていました。」
教室の扉を開けて入ってきた二つの影。聖夜と美和子だ。それを見て、クラスの大半が騒がしくなる。
「分かってるから早く席につけ。ホームルーム中だ。」
慎也も安堵の顔を見せて、2人に着席を施す。
「よし、なら続けるぞ。」
そうしてホームルームは再び始まった。
「よぉ、聖夜。相変わらずのグッドタイミングだな。」
翔は、後ろの席に着いた聖夜に向かって話しかける。
「あ?何のことだ?」
聖夜はポカーンという顔で翔を見つめる。
「何でもねーよ。」
翔はそう言うと前を向き直して、担任の話に耳を傾けた。
「なんなんだ?」
聖夜は訳が分からないと言わんばかりの顔で呟いた。
「どーせいつものやつでしょ。」
その呟きを拾った隣に座る美和子はなにか察したかのように言った。
「またか。恭子のやつも好きだなー。毎度飽きずによく出来るぜ。」
聖夜も得心いったのか、呆れ顔で話す。
「まったくね。私には無理。」
「同感だな。」
そこで2人の会話は途切れた。




