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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
9/81

フォーメーション

 新人の浦野さんを連れて階下の監視ルームへ。

 オレら派遣はそこでサーバの監視業務などをしている。それがオペレーションと呼ばれるやつだ。

 しっかし、今日から新人さんが来るなんて聞いてねえっつうの。役割分担フォーメーションとか考えないとアカンやろ。


「おはようございまーす……ん?」

 監視ルームのドアを開けると、いつものごとく同僚の滝岡があいさつしてきた。が、オレのうしろに女性がいるのを見て、いつもと違う空気に気づいたらしい。


「紹介します、こちら滝岡くんです」

 オレは浦野さんと滝岡を引きあわせた。

「浦野です、よろしくお願いします」

「……あ、た、滝岡です。よろしくお願いします」

 滝岡は若干しどろもどろだった。無理もない、この現場に女性のオペレータが入るのはこれが初だ。


「なんかね、今日から配属なんだって。富田さんから話、ぜんぜん聞いてなかったけど」

 オレはさりげなく富田への不満をもらした。

「めずらしいっすね」滝岡がうなずいた。

 富田はマンパワー・パラダイス社の営業担当者で、オレや滝岡をこの現場に投入した男だ。オレが1期生で滝岡が2期生、そのあとにも4人うちの派遣会社から入場している。


 とりあえず、今日はオペレーション業務はきみに任せて、オレは浦野さんの新人教育にあたろうかな的なことを滝岡に伝えた。

 彼は了承した。てか、今日の日勤シフトはオレと滝岡しかいないのだから、それ以外に選択肢はないのだ。


「えーと、この現場でどんな仕事をするかは、富田からだいたい聞いていますよね?」

 オレとしては何気ない質問のつもりだった。が、浦野さんの答えはまるで予想もし得ないものだった。

「富田さん……ですか」

「えっ」

 おいおい、こりゃどういうことだ。富田を知らないわけ……

「派遣会社の、営業担当の富田ですよ?」

 オレが確認しても彼女はまるで、ぴんときていない様子だった。それどころか、おそろしいことを言い出した。



「派遣会社の担当さんは、剛流さんて方でした。女性の」



 オレは動悸が激しくなるのを感じた。ごうりゅう……誰だそいつは? いや、営業担当者はたくさんいるから、オレのしらない人がいてもべつに不思議はない。

 だが、この現場を担当しているのは富田のはずだ。いきなり担当替えになるとか、あり得ない。

 もしそうだったとしても、オレら現場のスタッフになにも伝えないなんて考えられない。富田は営業としても優秀だがなにより信用できる男だ。

 だから、なおさら、あり得ないのだ。


 おかしい……そう、このときはじめて気がついた。むしろ遅いくらいだった。

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