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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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ループ

「メグーーっ!! オレだーーっ……石原だあーーっ!!」


 オレは声帯潰れるんじゃないかっていうくらい絶叫した。その声でテラスの上の彼女が気づいてくれた。よかった。

 メグは白無垢のウェディング・ドレスみたいな、和洋折衷のよくわからない衣裳に身を包んでいた。険しい表情でオレを見ている。そして彼女も叫んだ。


「シャラ! ……いつの間に、そこに?」

「いまは説明している余裕がない。はやくそこから飛び降りろっ」

「はあっ? こっから下まで何メートルあると思ってんのよ!」

「オレがおまえを受けとめる。はやくしろ、おまえは人質なんだぞっ」


 メグの表情がますます険しくなる、だが彼女はそれ以上、言葉を発しなかった。

 と、メグの背後から人があらわれた。オレは思わず目をうたがった。

 浦野さんだった。だが服装がちがった。この世界ゲームでの彼女はサファイアのひとみの衣裳を引き継いでいるはずだった。

 いつ着替えたんだ? なんて言うか、ちょっとアーミーっぽい服装。まあ彼女がなんでもアリなのは、いまにはじまったことじゃないが……。


「シャラ」

「あん?」

 メグはもう叫んでいなかった。ヘンな感じ……まるで頭のなかで彼女の声が聞こえているような気がした。

 これも浦野さんがメグにあたえた影響なのか。

「シャラ、まわりをよく見て」

 もう並大抵のことでは驚かないつもりでいた。が、これはいったい、なんだ……?

 闇だ。完全な闇のなかにオレはいた。まるで真っ暗な舞台に独りで立っているような感覚。ここは城内にある石畳の広場じゃなかったのか。ここがオレの脳内ゲームなのか。


「最初に会ったとき予言の話をしたの、おぼえてる?」

「……忘れた。てか、一度も実現しなかったぞその予言てやつ」

「ちょくちょく実現してたよ。いつかクルマのなかで剛流副司令のこと、話したよね?」

 オレは頭をかきむしった。

「よくわかんないな。剛流さんは浦野さんで、浦野さんがサファイアのひとみで……歳をとったり若返ったり、もう、なにがなんだか」


「予言は実現したの」

 メグはゆっくりと言った。

「剛流副司令と……石原司令がレッド・プリンスを討ち取った」


 胸がざわついた。よくわからない。よくわからないが、確実になにかが進行しているような気がする。

「石原司令って、だから、オレだよな?」

「石原司令はさっきまで、ここにいた」

 はげしく首を振った。オレじゃない、オレは一度もそっちのテラスには行っていない。


「石原司令と剛流副司令は事実上、結婚しているの」

「えーっ! ……じゃあもう、オレとはほど遠い人だね、そっちの石原さんは」

 そのとき異変に気づいた。メグのいるテラスが上昇している。いや、オレのほうが下降しているのか……。



「メグーーっ! なんかいろいろ、ありがとうなーーっ!!」



 ……聞こえただろうか。余韻もヘッタクレもなく、一瞬でテラスが見えなくなった。

 たぶんこれ、ゲームオーバーだ。そんな気がした。結果はどうだったろう。終始グダグダだったような、でも、自分なりに精一杯やったような。

「ゲームオーバーです」

 視界がいっさい利かないなか、どこからか誰かの声がした。


 いや、ゲームオーバーはわかったから。

「あなたはC級ガンマンです」

「そうそうそう……オレC級ガンマン、」



「……って違うだろ!」



 そして物語は繰り返す。

(『暗闇の来訪者』へ戻る)

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