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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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銃爪

 これからオレはこの衆人環視のなか、新郎のレッド・プリンスを狙撃する。こんなおめでたい日にアレだけど、彼には死んでもらう。それしかメグを救う方法はない。

 メグはなぜ、いまあの場所にいるのだろう。彼女が望んでやったこととは思えない。好きでもない相手に嫁ぐなんて……。

 きっと、彼女なりに考えてこうしたに違いない。

 メグの願いはただひとつ、猫人間たちの里を護ること。そのために彼女は自分の身を暴君に差し出したのだ。

 いや、暴君かどうかはまだ、わからないけれど……。わかるまえにあの世に逝ってもらうことになるけれど。


 ちょっと、ごちゃごちゃ言ってないで早く殺るわよ、と浦野さんが急かした。

 え、聞こえてたんすか? オレの脳内独白が?

 丸聞こえよ。いい、何度も言うけどこれはあなた自身のゲームなのよ? ようするに、コントローラーを握った状態でぶつぶつ言っているのとおなじなの。

 あのー……それじゃあ、浦野さんってばどういう存在なんすか。

 味方キャラでいいんじゃね? さ、アタシがカバーするから、ずどんとやっちゃって。


 オレは呼吸を整えると十円銃に手を伸ばした。「二丁拳銃ダブル・ガナー」……だがいまは片方だけでいい。

 頭の中でイメージする。右手でさっと銃を抜き銃爪をひく。すると十円玉が発射されてレッド・プリンスの脳天を……はやく撃てっての!



 すべてがスローモーションに見えた。脳天を射抜かれた王子はゆっくりと倒れて行った。彼はテラスの上なので、くわしい状況はわからないけれど。

 十円銃はふつうの銃ほど轟音を発しない。せいぜいぱすっ、くらいしか音がしない。狙撃したのがオレだとわかるまでに、いくらか時間があった。べつに逃げる気もなかった。

 悲鳴があがり、人々はオレという中心から一斉に離れて行った。すると今度は兵隊たちがかわりに、オレを中心に集まってきた。もちろん歓迎されているわけでは、ぜんぜんない。


 さあ、いいですよ浦野さん。オレは脳内で合図した。ま、聞こえていようがいまいが、チャンスはこの一度きり。彼女が援護してくれなければ、オレは兵隊たちによって蜂の巣にされる。

 身を伏せると同時に、オレの頭上でアレが炸裂した。浦野さんの遠隔操作による「爆弾石イラプション」だ。


 もともと全方位に散弾するおそろしい十円銃だが、今回のみ高さ固定でお願いしている。伏せているオレに弾が当たったら、洒落にならないからね!

 兵隊たちは瞬殺だった。ちょうど彼らがオレを蜂の巣にしようとしたのと、逆のことが起きたわけだ。

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