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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
79/81

花嫁

「あー……えっと、どこから聞けばいいんスか?」

 オレは浦野さんにむかって言った。とりあえず、この状況を説明してもらわないと。


「悪いけど、例によって時間がないのよ。いろんな意味で時間がないの」

「どうすれば、」

「メグを取り返す。さもないと彼女は、レッド・プリンスのお嫁さんになっちゃうのよ?」

 その話はほかでもない、サファイアのひとみの口から聞かされていた。いまは浦野さんだけど。

「それって、でも、メグ自身が望んだことなんじゃ……」


「そう、人身御供ひとみごくうといえば悲劇の定番よね」

「悲劇って」

「忘れたの? ここはゲームの中なのよ」

 オレは首を振った。

「とてもじゃないけど、そんなふうに思えないっす。リアルすぎて……」


 すると彼女はぽんぽん、とオレの肩を叩いて言った。

「だからね、悲劇のシナリオを変えちゃえばいいのよ」

「……いいんですか、そんなことして」

「いいに決まってるじゃない、だって、この世界のヒーローはあなたなんだもの」



 ……そうなの? まあ、薄々そうじゃないかなーって思ってはいたけど。なんだこれ、ぜんぜん嬉しくないぞ。

 なんでオレなの? いや仮にオレ自身が望んだとしてもだ。ヨーメンマンて、おかしくね?

 しかも現実とゲームのあいだを何度も往復したりして、さらにメグや浦野さんまで巻き込んだりして。

 むしろ巻き込まれているのはオレか。



 目のまえの景色が一瞬にして変わった。石畳。ものすごい観衆。ものすごい歓声。けっしてご都合主義なんかじゃあ、ござんせん。

 大勢の人々が彼と彼女を祝福していた。彼はたぶん、この国の王子だ。だってお城のテラスから手を振っているなんて、王家の人間くらいしか思い着かない。王様にしては、ちと若い。にんじんみたいな赤毛をした、あばた面のガキだった。

 となれば、その横で白無垢に身を包んでいるのが彼のお嫁さんだろう。そしてオレらの目的の女性でもある。


 今日は国を挙げての盛大にして華やかな婚礼パーティーであるらしい。パーリーであるらしい。

 こんなたくさんの方がたに来ていただいて、本当にあざっす。あ、違うか。いや、いいのか?

 だってこのゲームの主役はオレだからね!

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