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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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「オレらはミス・チーノの友だちで、これから彼女に会いに行くんだけど……一緒にどうかな、ベニ・ショーガ氏」

 咄嗟にオレは提案した。少なくともウソを含んだ内容じゃない。メグの居場所は正確にはわからないが、ある程度目星はついていた。


 猫人間の動きが止まった。彼はゆっくり振り向くとオレを見た。そして、あろうことか……また猫ちゃんの姿に戻ってしまった。


「なんなの……いったい」

 レイチェルが呆然としながら呟いた。オレも同感です、はい。

 と、いきなり寝室のドアが開いた。中から出てきたのは、ひとみだった。彼女以外誰も寝室にいたはずがない。だが、妙に違和感があった。


「ひとみ、さん?」

「遅くなってゴメンね石原さん」

 目のまえの女性はそう言って手を合わせた。そうか、若干違和感があったのは彼女が少し老けていたからだ。

 サファイアのひとみを老けさせれば、それはまんまあの女性ひとになる。

「浦野さん……っすか」


 彼女はにっ、と肯定の笑みを浮かべた。ここへきた理由も道理もわからない。でもなんだか心強かった。

 しばらく猫人間の里に身を置いていたオレにとって、現実あっちの世界の人間がきてくれたことが、なにより嬉しい。


「サファイアのひとみ?」

 レイチェル将軍が怪訝な顔で言った。無理もない、だが彼女が急に老けた理由を説明する気にはなれなかった。

 オレは黙って浦野さんの反応を待った。すぐに彼女は助け舟をだしてくれた。

「レイチェル将軍、とりあえず猫ちゃんを連れて里へ戻ってください。アタシは彼と一緒に聖女を取り返しに行きます」


「彼女の居場所を知っているの?」

 レイチェルはものすごい形相でオレに詰め寄った。

「あ、あの……いろいろ立て込んでいて、話すきっかけがつかめなくて」

 オレは慌てて弁明した。いや、弁明にすらなっていないけど。


 はあ、と大きくため息をくと、レイチェルはオレを見て言った。

「……わかったわ。なんだか、アタシたち猫人間には入り込めないような事情があるみたいだし、これ以上は立ち入らない。あなたたちがどっちのがわに立とうと自由よ」

「いや、オレらは猫人間の味方っすよ? それはメグの意志でもあるし……」


「そうね、信じて待つことにするわ」

 それだけ言ってレイチェル将軍はログハウスを出て行った。もちろん、猫ちゃんのベニ・ショーガ氏を連れて。

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