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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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夢の共有

 ち、と電話のむこうで舌打ちが聞こえた。ほんと、すみませんしょっぱい男で……。

「いいわ、あんたの居場所をGPSで探知して、アタシがクルマで迎えに行く」

「え、司令官が里を離れて大丈夫なんですか?」

「いまは、それどころじゃない。もう魔女には助けてもらえないし、ダーリンもこの状態じゃ話にならないわ」

 そしてレイチェル将軍は、なにかにすがるように言った。

「せめて、せめて聖女だけでも、取り返さないと」


 いったん電話を切ったあと、レイチェルからふたたび着信があった。

 GPSで調べたところ、彼女がここへ着くまで5時間くらいかかる、といった内容の電話だった。

 わかりました、そう言ってオレは通話を終えた。ほかに言葉が見当たらなかった。


 ひとみは依然眠ったままだ。ふとした拍子に彼女が起きるんじゃないか、などと期待してみたが、そう都合よくはいかないらしい。

 とりあえず、ひとみをきちんと寝かせてあげよう。オレは眠っている彼女を抱き上げて寝室まで運んだ。

 軽っ! びっくりするくらい彼女は軽かった。これであの強さって……。ふと思った、彼女はこの世の者ではないんじゃないか。

 ま、オレも似たようなものだが。


 はじめてお邪魔するお宅の、それも妙齢の女性の寝室に入るなんて、正直気が引けた。でも、この場合しゃーないからね?

 ゆうてもログハウスだ。部屋のつくりは、いたってシンプルだった。が、そこは女性らしく、寝室にはいろいろな織物や衣服が壁にかけられていた。

 あまりジロジロ見るのもわるいので、ひとみをベッドに寝かしつけるなりオレは退散した。

 寝室を出たあとで、あ、そういえばと思った。壁にかけられていた衣服に見おぼえがあったのだ。

 あれはベニ・ショーガ氏が着ていた服にそっくりだった。


 ひとみはベニ・ショーガ氏のことが好きだと言った。レイチェルが聞いたら、たぶん、めっちゃ怒ると思うから言わないつもりだが。

 それにしても、なぜそんなことになったのだろう?

 すくなくともベニ・ショーガ氏は、サファイアのひとみを敵対視していたはず……。

 やはり、ひとみが言っていた夢の世界とやらが、関係しているのか。


 夢を共有する。そんなことが、はたして可能だろうか。できそー、この魔女ならできそー。

 彼女の寝顔はやすらかだった。あるいはベニ・ショーガ氏の夢を見ているのかもしれない。


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