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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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ロング・スリープ

 思わず言葉をうしなった。ただでさえハイ・スペックのこの魔女にメグの能力が加わったなら、そりゃもう最強ですよ。

「それで……」

「ふたつのことが、わかった。ひとつは、メグがレッド・プリンスに嫁ぐつもりでいること」

「えーっ!」

「もうひとつは、サファイアのひとみが……アタシ自身が超ロング・スリープに入ること」


 正直、驚いているヒマもなかった。言い終わると同時に、魔女は脱力した。目を閉じ椅子にもたれかかり、手は宙ぶらりに……。


「ひとみさん……ひとみさん!」

 どうやら冗談では、なさそうだった。彼女の身になにが起こったのか、もちろんオレにはわからない。

 だが先の戦闘で、ひとみがはげしく消耗したのは事実だ。そうまでして里を護ろうとした彼女の気持ちに胸があつくなった。

 ……どうしよう、オレは途方に暮れた。ここがどこであるかすら、わからない。どこへ行くべきか、どこへ帰るべきなのか。

 悲しくなるほどオレは無力だ。


 と、そのとき不意にオレのスマホが鳴った。

「もしもし」

「ヨーメンマン? レイチェルだけど」

「あ、どうも」

 女将軍からだった。里でなにか、あったのだろうか……。

「困ったことになったわ。すぐに戻ってこれない?」


「……ムリです。オレのほうも困ったことになりました」

「なに、まさかあんた、本当に手めにされちゃったの?」

「だから違うって!」

 いつまで下ネタを引っ張るつもりなんだこのヒト……じゃなかったこの猫人間。まあいい、ここでキレてもしゃーない。

 オレはレイチェルに、ひとみが超ロング・スリープに入った経緯を話した。

「マジで? じゃあ、いつ起きるかわかんないってこと?」

「ええ……それより、里でなにかあったんですか」


 オレが促すと、電話のむこうでレイチェル将軍はすこし口ごもった。

「それがね、帰ってきたのよ。……ダーリンが」

「え、まさかベニ・ショーガ氏、怪我でもしたんですか? それとメグは……」

 返答までに、たっぷりの間があった。

「帰ってきたのは、ダーリンだけ。それも猫のすがたで」


 胸がざわついた。ベニ・ショーガ氏が猫のすがたを晒すなんて、滅多にないと彼自身が言っていたのを思い出した。

「ずっと、猫のすがたのままなのよ……」

 レイチェルは若干、涙声だった。

 あっちでも、こっちでも、ヤバいことが起きていた。しかも問題は根っこのところで、つながっているような気がした。

 言わずもがな、メグの不在である。


「……あんた、いまどこにいるの?」

「わかりません。鳥の背に乗って、かなり遠くまできました」

「これから、どうするつもり?」


「途方に暮れていたところ、です」

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