きれい、さっぱり
迷った挙句、ぜんぶひとみに話すことにした。
彼女とおなじ日本から無理くり転送されてきたこと。この世界では、伝説の武道家ヨーメンマンとして扱われていること。
そして、ヨーメンマンとして、はじめ魔女に敵対していたこと……。
今度はオレが聞く番だった。
「とりあえず、ブラックタイガーと貴女の関係について教えてもらっても、いいですか」
「ブラックタイガー?」
ひとみは白々しく言ってのけた。
「お忘れですか。地下で何やらあやしい儀式をしていた、あの悪党です」
「ごめんなさい」
魔女はゆっくりと首をふった。
「何もおぼえていないの。いちばん最近の記憶は、メグとベニーに会ったこと……」
「彼らに会ったんですか!」
オレは思わず身を乗り出した。なんで、そんな大事なことをはやく言わないの? ……でもまあ、言い出すタイミングもなかったかもしれない。
「彼らは無事ですか」
「ええ……とりあえず、アタシの話も聞いてもらって、いい」
ひとみはメグたちとの出会いについて語った。正直よくわからなかったが、なんでも、夢のような世界を共有したらしい。
「なんで、そんなことになったんですか?」
「そうね……アタシに疚しい気持ちがあったのは事実みたいね。聖女さまに嫉妬していたらしいの」
「らしい、って。おぼえてないんですか」
「そうね」
魔女は遠い目をして言った。
「過去の悪だくみとか、悪い感情とか、ぜんぶ聖女が洗い流してくれたみたい。おかげで、いまのアタシはきれいさっぱり」
「それでメグの味方に?」
「うーん、そういうわけでも、ないんだけど。でも猫人間たちの里が滅びるのはイヤだった。だってアタシ、ベニーが大好きだから」
ベニ・ショーガ氏の野郎……モテモテじゃないですか。よし、帰ってきたらシメてやろう。
「でね、これからのことなんだけど」
「はい」
ひとみはたっぷりの間をおいて言った。
「メグはレッド・プリンスに会いに行ったわ」
レッド・プリンス……たしか|四天王(彩)(フォーカラーズ)のひとりだ。オレが会っていない、最後のひとりだった。
「メグの目的は、いったい……」
「彼女の能力のことは、ご存じかしら?」
「はい……あの、なんでも見通しちゃうような、あれですよね」
「そう。じつはね、彼女の影響かわからないんだけど、アタシも、すこしだけ先が視えるようになったの」




