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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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鳥の引力

 人生において、ネ○ーエンディング・ストーリーの真似事ができる機会なんて、そうそうないだろう。幸か不幸かオレはいま、あの有名なシーンを再現している真っ最中だった。

 巨大生物の背に乗り、空を駆ける。……違った、ものすごくでっかい小鳥だった。それをもはや小鳥とは呼ばない。怪鳥?

 おまけに、となりには知り合ったばかりの魔女がいる。魔女と空中ドライブだ。


 当たり前だが地上20メートルの高さを鳥の背に乗って飛んだためしなど、あるわけがない。本来なら吹き飛ばされないように、しがみつくのが、やっとのはず。

 そこは魔女のナビゲーターがついているだけのことはある。風の抵抗とか鳥の引力(慣性の法則)とか、いい具合に調整してくれている。たぶん魔法で。


 正直、空の上は快適だった。サファイアのひとみ……魔女がオレをどこへ連れて行くつもりなのか、それがわからなかった。


 飛行時間は思ったより長かった。30分以上は飛んでいたと思う。ひとみは途中、うつらうつらしていた。

 そういえばさっき眠いみたいなこと言ってたな。しっかし、寝ながら怪鳥を制御するってスゲーな……。


 オレらを乗せた鳥は、やがて着陸態勢に入った。羽をばっさー広げて。

 着いた場所は草原だった。魔女はひょいと身軽に鳥の背から降りた。お転婆すぎるだろ。オレもそれにつづいた。

「ご苦労さま」

 魔女がぱちん、と指を鳴らすと、怪鳥は小鳥のサイズに……ならなかった。かわりに家になった。

 うっはー、目が点ですよ。じゃあ最初から家のかたちで飛べば、よかったんじゃね? お転婆すぎるか。


「ここが、ひとみさんの家っすか」

 オレが聞くと、彼女はふふ、と笑った。

「そうね……もうだいぶ長いこと、住んでいるような気がする」

 それは、この建物にって意味ですよね。土地はさっき、ものすごく適当に選びましたよね。

「さ、どうぞ入って」


 家、っていうかログハウスのなかは、あやしい雰囲気につつまれていた。外はまだ陽が射しているのに、部屋のなかは薄暗かった。ランプの明かりさえ灯っていた。

「辛気臭くて、ごめんなさいね。明るい場所は基本的に苦手なの、すごく疲れるから」

「あ、ぜんぜん、かまわないっす」

 オレは大げさに手をふった。そんな彼女が日中、あんな戦闘を繰り広げたのだから、それは相当な負担だったと思われる。

「ビール、飲むでしょ?」

「あ、すみません」

 なんか恐縮した。


 缶ビールはキンキンに冷えていて、やたら美味しかった。いったい、これはどんな魔法なんだろう。このログハウスは異次元とつながっているのか……。

 聞きたいことは山ほどあった。どれから話せばいいか、わからなかった。



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