ない交ぜ
敵軍が退却して行った。たとえ数千の兵をもってしても、雑魚では大魔女の相手にならない。今回、ひとみがそれを証明したのだ。
「ありがとう大魔女さま。やっぱ、あんた強いんだな」
レイチェル将軍はそう言って握手をもとめた。
「痛たた……ひさしぶりに運動したから堪えたわ」
ひとみがそれに応じて言った。
「とりあえず、アタシ帰るわ。なんか疲れたし……とても眠い」
「あ、ちょっと待って」
立ち去ろうとする魔女を女将軍が呼び止めた。
「ぜひ、礼がしたい。なにか欲しいものはないか?」
レイチェルの問いに、ひとみは首を傾げた。魔女に欲しいものなんて、あるのだろうか、とオレは思った。余計なお世話か。
「そうね……」
と、魔女はオレの方を見て言った。なんか、めっちゃイヤな予感がするんですけど……。
「彼を、ちょっとお借りしても、いいかしら」
「この男を?」
レイチェル将軍が目をくりくりさせて言った。信じられない、といった様子で。ええ、オレも信じられません。
「その……なんだ、こういう男が好みか。ちょっと生っ白いような」
いやレイチェルさん、彼女そこまで言ってないでしょーよ。
「うふふ、そうね」
そうなのかよ! うふふ、て。
「わかった、この男のカラダで好ければ、すきにするがいい」
カラダ、て。これ全年齢対象作品だからね? それと、なんで貴女が許可してるんですかレイチェルさん!
「……そういうことじゃ、ないんだけど」
魔女が言った。そういうこと、ちゃうんかい! 期待と不安がない交ぜになったオレはもう、いろいろと、すごいことになっていた。
「わかりました、オレ行きますよ。……ひとみさんは、たぶん、話し相手がほしいんだと思います」
彼女はこの世界では魔女と呼ばれている。が、さっきチラッと話した感じでは、彼女もオレと同様に日本から送られてきたらしい。
そのへんの事情はオレも興味があった。
「うん、人間同士、仲良くやるがいい」
言ってレイチェル将軍はうなずいた。
「とりあえず、直前の危機は去ったが、まだまだ予断を許さない状況だ。頭をうしなった緑の残党たちの動向も気になる。それと、ダーリンたちの動きも……」
女将軍はすこし寂しそうだった。メグとベニ・ショーガ氏がジープで旅立って以来、彼らとは音信不通の状態が続いていた。
スマホもタブレットも電波が届かない状況なのだ。メールの返信すらない。自然と彼らの安否が気になる。
「また、なにか状況が変わったら、すぐ連絡してください。オレもそうします」
オレは怪鳥、てか小鳥のバケモノの背に乗りつつ言った。




