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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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伏兵

「2対1なら有利、とか思わないでね? こっちにも味方がいるんだから」

 ひとみが挑発するように言った。味方とはすなわち、オレのことだ。あまりお役に立てないかもだけど……。

「味方ぁ?」

 黄色猫ネコマリンはオレを一瞥すると、ふんと鼻で笑った。

「行くぜ、マナリシ」

 相方の軍人に声をかけるやいなや、いきなりネコマリンがひとみに襲いかかった。


 まさかの打撃戦だった。

 ネコマリンの鋭い爪が次々と繰り出される。が、ひとみも負けじとそれを防ぐ。目には目を、爪には爪をだ。ひとみの爪がめっちゃ伸びていた。うーん、さすが魔女。

 軍人マナリシが動いた。本当なら、ここでオレがヤツを食い止めなければいけなかったのだ。あまりの速さについて行けなかった。


 おそろしいことが起きた。軍人が攻撃に加わるのを察知した魔女は、ふたつに分裂した。いわゆる分身の術ってやつ?

 軍人も容赦ない打撃で片方のひとみを追い詰める。分身したことでパワーが半減したのか、魔女は防戦一方だった。

 とりあえず、とりあえず片方だけでも助太刀しないと。オレは自慢の「二丁拳銃ダブル・ガナー」を抜いた。

「あ、」

 さっきネコマリンが鼻で笑った意味が、ようやっとわかった。打撃戦に銃で助太刀することはできない。オレの撃った弾が仲間ひとみに当たる可能性があるからだ。


 自分の不甲斐なさに歯ぎしりした。ぜんぜん役に立ってないじゃんオレ! ……やばい、このままひとみが倒されたら、次、確実に殺されるのはオレだぞ。


 と、そのとき。音もなく人影があらわれ、グリーン・マナリシを斬りつけた。

「レイチェルさん!」

 女将軍の、電光石火の一撃だった。

 円月刀により真っ二つにされたマナリシは、ぼわん、と半透明の幽体となり昇天した。やっぱ、このルールは変わらないのね……。

 相手がふたりじゃなくなった魔女は分身をやめた。一気に形勢逆転である。


「……くそう!」

 状況が不利と悟ったイエロー・ネコマリンは攻撃の手を止め、逃走の態勢に入った。

「逃がすかよっ」

 オレは完全にキレていた。つーか、一発も撃ちませんでしたなんて、格好わるくて彼女らに顔向けできない。

 いけ好かない、でっかい猫人間をねらって銃爪を引いた。


 草と土が大きく跳ね上がった。あれっ?

 一匹の猫が走り去って行くのが見えた。ああーっ……そうだった、あいつら、いざってときは猫のすがたに戻れるんだ。

 オレはレイチェル将軍に向き直って言った。

「ごめんなさい」

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