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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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開戦

 地鳴りのような音がした。ついに敵軍がやってきたのだ。夥しい数の兵士が丘をのぼってくるのが見えた。

 この城砦都市は高台に位置しているので、戦車とかそういう物騒なモノで駆け上がってくるのは、どうやら無理のようだ。

 見る間にそこらじゅう敵兵で埋め尽くされた。見晴らしがいいのもまた困ったものだ。むこうからも、こちらが丸見えである。


 なるほど、イエローなんちゃらとグリーンなんちゃらの連合軍だけあって、きれいに二色に色分けされている。

 見たかんじ敵将はいないようだった。ま、おおかた丘の下で、戦車かなんかに乗って見物でもしてるんじゃなかろうか。


「ひとみさん、どうします?」

 オレは聞いた。先手必勝である、ってゆうか、早く撃たないとこっちが蜂の巣にされそうだった。

「敵の出かたを待」

 言い終わらないうちに魔女は倒れた。撃たれたのだ。

「ひとみさん!」

 頭のなかがパニクった。怪我の程度は? こういうときって、どうすりゃいいの……。


 と、そのとき。うつぶせに倒れているひとみの身体から、なにかが噴き出した。よくわからないが、水蒸気のようにみえた。

 これって……霧?


 霧に包まれ視界がまったく利かなくなった。敵もこちらが見えないのか、動く気配がない。

「とりあえず、雑魚は片付けたわ」

 すぐ後ろで声がした。撃たれたはずの魔女が立っていた。

「……大丈夫ですか」

 オレがそう聞くと、ひとみはふふ、と笑った。彼女の目が真ブルーに光っていた。

 にわかに霧が晴れてきた。視界がクリアーになったとき、おそろしい光景を目にした。


 敵兵の姿がひとりも見えず、かわりに、それとおなじくらいの数の石像が辺りに転がっていた。

「石っすか、敵を石にしちゃったんすか」

「うふふ、なんだか、ちょっとした遺跡みたいよね」

 ひとみはまるで冗談のように笑った。怖えー……魔女怖えーよ。


 丘の下で敵軍が慌てふためいている。そりゃそうだ、ここは死の丘だ。のぼってきた者は全員、石にされちゃうよ?

 すると、敵に動きがあった。戦車から何者かが降りてきて、まっすぐ丘をのぼりはじめた。

 どこの命しらずだ? が、そんなバカがもうひとり、おなじようにこちらへ向かってくる。

「親玉があらわれたわ」

「……え、それじゃあ」

 サファイアのひとみは腕を組んだまま、しずかに言った。

「イエロー・ネコマリンと、グリーン・マナリシよ」


 予備知識はまったくなかったが、どちらがイエロー・ネコマリンかは一目瞭然だった。というのも、片方は猫人間だったのだ。

 猫人間のくせに猫人間たちの里をおびやかすなんて、正義漢でもないオレだが腹が立った。

 すると必然的にもう片方がグリーン・マナリシということになる。旧ナチスのような、わかりやすい軍人然とした男だった。


「イヤッハーッ! ……サファイアのひとみ、おめーが絡んでいるとは思わなかったぜ?」

 うっわ、なんだこの黄色猫……。超ガラわるい!

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