あハードデイズないと
未来、メグはそこから来たわけじゃないと言った。だとしたら、彼女にいろいろと便利な道具を渡した人物がいるはずだ。そうドラ○もん的な。
あくまで彼女がドラ○もんでないと仮定したらの話だが。
いろんな可能性があった。本当にイヤというほど。
もうつぎの瞬間にも誰かがオレに発砲してくるかもしれなかった。おまわりさんに、ちょっといいですかと呼び止められるかもしれなかった。
正直、地獄だった。
いつもとちがう一日を終え、たった一日なのに、泥のように疲れてオレはアパートにたどり着いた。あー、しんど。
てか、これから毎日これってムリだぜよマジで……考えたくなかった。とにかくいまは一秒でもはやく湯船に浸かりたい。
裸体になろうとして重大な問題に気がついた。未来の服じゃなかった防弾衣ですよ。果たしてこいつを脱ぐことができるのか。
いまはレオタードくらいに縮めてある。念じれば伸縮自在の優れもの、はい前回やりましたね。
オレは極限まで縮むように念じた。
すると、あっちゅう間にそれは縮小しリスバンくらいのサイズになって左手首に収まった。すげー銭湯みたい。
これならわざわざ外す必要もないだろう、てか習慣的に身につけるように心がけないと。だって入浴中も敵に襲われるかもしれないからね!
だからもちろん十円銃もバスルームの中だ。銃って湯気とか大丈夫なんだろうか、まいっか、未来の道具だし。
風呂からあがってキンキンに冷えたビールを一気に呷ると、なんだかこれまでのことが全部ウソのように思えた。
人間てのは単純なもんだ。だいたい寝込みを襲われたら、もう終わりですよ。気楽に構えることにした。
不意にスマホが鳴った。直感的にメグからだと思った。表示された番号におぼえはなかった。
「もしもし」
「おはこんばんちわ、メグちゃんでーす」
「なんだそのテンション……あー、やっぱオレの番号知ってたのか」
名前住所勤務先までバレているのだ、ぜんぜん不思議ではなかった。
「どお、なんか進捗あった?」
「いやなんも。とりあえず、くたびれ果てた。世界中の人間が敵にみえる」
「……まあ用心することね。またかける、毎日じゃないけど」
「おい」
「なに?」
「これ、おまえの番号でいいのか」
「そうだけど、JKにプライベート電話とかマジ犯罪だよ?」
「しねーよ、でもこっちの命があぶなくなったら夜中だろうが電話する」
「そうね2秒で駆けつけるわ」
「パーマンか」
「パー子よ」
「おまえマジで歳いくつだ?」