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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
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かならず

 思わず身震いがした。サファイアのひとみとは少なからず因縁がある……もちろん、お目にかかるのは初だ。

 マジでイヤな予感しかしない。メグとベニ・ショーガ氏がこの里を離れたのも、おもにサファイアのひとみを引きつけるための陽動作戦だった。

 そのひとみがここへ来たってことは、まさかメグたち、やられちゃったんじゃないだろうな……。


「かならず、ひとみですか?」

 オレが聞くとレイチェルはため息を吐いた。

「アタシも実物を見るのは、はじめてよ。でも怪鳥に乗った青いローブ姿の魔女はとても有名」

 さいですか。


「いいわ、アタシとヨーメンマンで直接交渉する。城門前で魔女を待たせなさい」

 レイチェル将軍は側近的な猫人間にそう伝えた。

「オレも、ですか」

 いちおう聞いた。

「魔女は人間よ。おなじ人間の、あなたがいてくれれば心強い。それに、」

 オレの目を見据え、彼女はぴしゃりと言った。

「場合によっては、あなたを人質として差し出すから覚悟してね」


 うっわ……なんかオレ、かならず捨て駒にされているような。まあでも、しゃーないか。これが戦争ですよ。


 城門までの道すがら、レイチェルがさらに念を押した。

「いい、もし魔女が攻撃してきたら、自分よりもアタシの身を優先して護るのよ?」

「はい……」

 ちょっと、どんだけツンデレなんだよこの(ひと)! ベニ・ショーガ氏に酒でも奢ってもらわないと、マジで割に合わないっしょ。

 

 厳戒態勢が敷かれていることもあり、都市内部は人通りもなく、ひっそりしていた。

 とくに護衛をつけるわけでもなく、女将軍はズンズン進んで行く。そっか、護衛はオレなのだ……。

 それにしても、行きがかり上仕方なく味方することになった人間(オレ)を、レイチェルはなぜここまで信用しているのだろう。

 伝説の武道家ヨーメンマンとは、それほど義に厚い(おとこ)だったのか……いやいや、それにしてはヨーメンマンの扱いがヒドくね?

 わからん、一言でいうとそれに尽きる。将軍ってのはこれくらい不思議ちゃんじゃないと勤まらんのだろうか。


 バカでかい城門が見えてきた。往きも通ったお勝手口みたいなところから、オレとレイチェルは城壁の外へと出た。

 サファイアのひとみが腕を組んで待っていた。ドヤ顔で。

 はじめて見る顔だったが、そんな気がしなかった。この顔、どっかで見たことあるぞ?


「浦野さん……」

 オレはつぶやいていた。浦野さんだ、いや浦野さんじゃない。浦野さんだけど浦野さんじゃないのだ。

 頭が混乱した。目の前にいる青いローブをまとった女性は、たしかに、浦野さんにそっくりだった。

 だが、しかし、オレの知っている彼女よりもウンと若かった。正直、こんな美人だったのかと思った。

 現実世界あちらにいる浦野さんには、口が裂けても言えないけど。

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