表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第三部 ゲームの戦争
67/81

兆し

 どえらいことに、なりましたよ。えーと、これっていちおうゲームですよね? 戦争になっちゃったんですけど……。

 冷静になって考えてみる。オレがこの世界に飛ばされてきて、この十円銃で誰を撃ったか。何人撃ったか。

 じつは誰も撃っていないのだ。

 ブラックタイガーのおっさんを撃つには撃ったが、ヘンな魔力で跳ね返された。


 だが一方で、この銃が、なんかしらないけど強力であるのもまた事実なのだ。コンクリの床や銅像の脚を吹き飛ばしたりした。


 オレの「二丁拳銃ダブル・ガナー」で人間や猫人間を撃ったらどうなる。死ぬのか? 実例サンプルがないので判断がつかなかった。

 これまで、この世界で人が死ぬ(?)のを二回見た。はじめがチーノを襲ったふたり組で、つぎがブラックタイガーのおっさんだった。

 どっちも手をくだしたのはオレじゃなく、現実世界にいる浦野さんが遠隔操作でやった。彼女の登録銃「爆弾石イラプション」が火を噴いた。じゃなくて十円玉を噴いた。


 犠牲者たちは、あっけなく昇天した。血を流すわけでもなく、幽体となってふわふわとどこかへ消えたのだ。

 まるでゲームみたいに。そう、もともとこれは浦野さんのゲームだった。だが状況は変わった。オレはいま、自分の意思で、自分の武器で人をあやめないといけない立場にある。


 正直、こわかった。ゲーム感覚で人を殺めていいのだろうか。本当にこれはゲームなんだろうか……。



 作戦本部の置かれた一室。窓際でレイチェル将軍が険しい顔をしていた。無理もない、これから大軍が押し寄せてくるというのだから。

 彼女の表情を見るかぎり、とてもこれがゲームだなんて思えない。

 猫人間たちの里であるこの城砦都市は、いま危機に直面している。そしてオレのミッションはここを護ること。運命共同体ってやつだ。

 敵の数は数千はくだらないと聞く。そんな数を相手にオレの銃で立ち向えるだろうか。

 無理じゃね? いや、案外とイケんじゃね?


 不安と恐怖、そしてあきらめが入り混じった複雑な感情のもと、オレはひたすら開戦のときを待っていた。

 と、そのとき。

「なによ、あれ」

 窓際のレイチェル将軍が言った。オレは彼女のそばに近づいた。


 鳥だ。でっかい鳥が城門目指して飛んでくるのが見えた。まるで悪い兆しみたいだった。

 巨大な鳥は城門から200メートルくらい離れた平地に舞い降りた。きっと狙撃されることを恐れたのだろう。

 さらに驚いたのは、鳥の背に人が乗っていたことだ。長い髪と衣装からして、遠目にも女性らしいとわかった。

「ちょっと、ウソでしょう」

 レイチェルが目を見開いて言った。

「誰なんです?」

 オレが聞くと、彼女は脱力したようにつぶやいた。


「……サファイアのひとみ、たぶん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ