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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第二部 岩元恵美
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だいじょうぶ、だいじょうぶ

「なんだか、里がたいへんなことになっているみたいよ?」

 ひとみがドヤ顔で言った。さっきとは打って変わって、おどろくほど自信に満ちた表情だった。目が真ブルーに光っていた。

「わかってるわ」とメグ。「里は里で、なんとか持ちこたえてもらうしか、ない」

「ねえ恵美ちゃん」

「メグだってば」

「メグ、『霧』のなかで読んだ本。あのとおりにならなければ、いいけど」


 それは『青い国』という童話(?)で猫人間たちの里が壊滅することを示唆していた。あとヨーメンマンこと石原の死亡も……。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 メグは自分に言い聞かせるように言った。本当は不安だった。が、自分たちには別動隊としての使命がある。

 いまは振り返ってはいけないのだ。


「アタシが味方してあげようか? ってゆうか、そのつもり満々なんだけど」

 魔女はそう、おかしそうに言った。

 メグと猫人間は顔を見合わせた。ひとみの意図が、まったくわからない。

「うん、それじゃあ、よろしくお願いしますねひとみさん」

 メグがぺこりと頭をさげる。となりで、だいじょぶですかー? みたいな顔で猫人間が見ている。

 この期におよんでサファイアのひとみが猫人間の里に害をなすようなことは、ないだろう。だが絶対とは言い切れない。

 だからもう、魔女を信用するほかなかった。


「まかせておいて、アタシがつけば百人力よ」

 と、いきなりでっかい鳥が、羽をばっさー広げて魔女のとなりに舞い降りた。ひとみはその鳥……怪鳥の背によじ登った。お転婆すぎるだろう。

 怪鳥というと翼竜のようなものを想像しがちだが、これはちがった。シジュウカラみたく、公園で見かけるような身近なタイプだった。

 だから余計にでかくて気持ちわるかった。


「里はアタシが護るから、かならず戻ってきてねメグ」

 怪鳥が舞い上がった。そして、ものすごいダイナミックに空へと羽ばたいて行った。

 それを見送ったメグと猫人間は、ただただ呆然とするのみだった。ふたりとも口をそろえて言った。

「「大丈夫かなー……」」



 さて、舞台はふたたび猫人間たちの里へもどる。

 この城砦都市の未来を託された作戦本部では否応なしに緊張感が高まっていた。

 イエロー・ネコマリンとグリーン・マナリシの同盟は現実のものとなり、この里を侵攻すべく、何千という兵が向かっているとの報せが入っていたのだ。

 里の総大将であるレイチェル・ダン将軍は腕を組んだまま、けわしい表情で窓の外を見ていた。


 作戦本部が置かれた一室。そこには、ここで唯一の人間である石原の姿もあった。

 彼が超ビビッていたことは、内緒ってことで。

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