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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第二部 岩元恵美
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戦記

「猫人間の里は鉄壁の城砦都市で、また独自の技術力をもって武装化もされていた。

 だが、黄と緑のふたつの軍勢をかけ合わせた大軍のまえには、さすがの城壁も持ちこたえることができなかった。

 猫人間たちは最後の手段にでた。開城前にいっせいに地下へと逃げたのである……」


「開城と同時に黄と緑の連合軍が雪崩れ込んできた。彼らの目的は猫人間たちの捕獲だった。

 獲物が地下へ逃げようものなら、これを阻止し、どこまでも追いかけよ。兵たちはそう命令されていた……」


「そこに、兵たちの追撃を阻む者があらわれた。ヨーメンマンという名の、人間の男だった。

 人間が猫人間たちに味方したのだ……」


 ヨーメンマン? 思わず恵美は顔をしかめた。ラーメンマンなら知っているけど……。


「ヨーメンマンはたった二丁の拳銃で大軍と渡り合った。彼の銃は特別だった。

 しかし、何千という兵を相手に戦いつづけるなど、所詮は無理だった。彼は勇敢に戦い、そして散った……」


 恵美はページを繰る手をとめた。なんだこれ、まじめな戦記かと思ったら……いわゆる英雄譚ヒーローもの

 まあいいわ、とにかく先を読もう。


「ヨーメンマンの死は、けっしてムダではなかった。

 彼は充分な時間を稼いだ。そのあいだに、すべての猫人間たちが地下へ逃げることができた。

 それだけではない。猫人間たちは最期の抵抗をしてみせた。独自の技術で創りあげた街を、独自の方法で瓦解させたのだ……」


「城塞都市は一瞬で崩壊し、猫人間たちが逃げたと思われる地下への通路も永久に閉ざされた。

 ヨーメンマンの遺体は、ついに発見されなかった……」


「城塞都市が崩壊したことで、突入していた連合軍もそうとうなダメージを負った。撤退を余儀なくされた、しかも戦果はゼロである。

 黄と緑の仲間割れは必至だった。彼らは醜い争いをし、互いに衰弱していった……」


「そこへ台頭してきたのが赤の軍勢である。いわゆる漁夫の利を得た状態で、黄も緑ももはや抵抗する力をうしなっていた。

 こうして悪の、もとい赤の帝国は誕生しその隆盛をきわめることになるのだが……つづく」


 えーっ! ちょっと……地味につづきが気になるんですけど。次巻が読みたい、いますぐ読みたい。


「気に入ったかしら?」

 気がつくと、ひとみさんが目のまえにいた。恵美は驚きのあまり椅子から転びそうになった。

「……え、ひとみさん、いつからそこに」

「うーん、ちょっとまえかな。だいぶ熱心に読んでたみたいね」

 クスッと彼女は笑った。

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