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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第二部 岩元恵美
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同郷の人

 ベッドのうえで恵美は目覚めた。時間の感覚がすっかり狂っていた。

 身体はだいぶラクになっていた。誰かに助けられたのだということは、わかる。だがけっこう眠ったはずなのに、まだ朝になっていないようだ。

 それとも、昼間もぶっ通しで眠りつづけていたのだろうか?

 とりあえずベッドから起き出してみる。と、恵美は自分の服装が変わっていることに気がついた。タンクトップにえらく丈の短いジーンズのパンツを穿いていた。


 殺風景な部屋だった。ベッドとテーブルがひとつあるだけ……テーブルの上には弱い光を放つランプと、ガラス瓶の水筒が置かれていた。

 水筒は恵美の唯一の持ち物だった。あ、それと○ッキーの腕時計も、まだ彼女のうでに巻かれていた。


 窓はあったが外の景色が見えなかった。月もない夜なのか、それとも森のなかにこの家は建っているのか。

 恵美はおそるおそるドアを開けた。すると、もうすぐそこがべつの部屋だった。見た感じ居間のようだった。

 そこに、たぶん恵美を救ってくれた人物と一匹の猫がいた。


「気がついたのね。お加減はいかが?」

 その人物は女性だった。黒髪の美しい女性で……日本人だろうか。

「あ、はい」と恵美。「助けていただいて、ありがとうございます」

「なにか食べられそう?」

「あ……はい」

 正直、めっちゃお腹が空いていた。こうなったらもう、とことん世話になってしまえ。恵美はそう思った。


 黒髪の女性はアツアツのシチューをふるまってくれた。涙がでるほど、おいしかった。パンも一緒に出してくれた。

 がっつかずに食事をするのが、これほどむずかしいとは、恵美は思いもしなかった。

 せわしなく手を動かす恵美を、女性はうれしそうに見ていた。


「お名前、聞いていいかしら?」

「……あ、い、岩元恵美です。日本人です」

「そう。アタシは佐藤ひとみ、よろしくね」


 恵美はあまりにラッキーすぎる展開に感動した。まさか、こんなところで同郷の人に助けられるとは!

 だが、なにから話していいか、わからなかった。信じてもらえるかどうかも。それでも、ありのままを話そうと恵美は思った。


「あの、私、とつぜんこの土地へきてしまったんです。日本にいたはずなのに、いきなり……」

 言葉にすると泣きそうになった。そんな理不尽なことがあっていいものか。でも佐藤さんは意外な反応をした。

「ここは、どこだと思う? 恵美ちゃん」

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