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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
5/81

ハイグレード

 最後にいちばん重要な質問をした。避けては通れない問題だ。

「おまえは武器を持っている、そしてオレのところにも同じようなのが送られてきた」

 言いながらオレはサイドボードに近づき、例の箱を取り出した。

「ようするに、誰かと戦わなくちゃいけない状況ってことか?」

「……そうね」

 メグは表情も変えずに言った。


 やっぱり、と思いつつオレは続けた。

「オレは社会人で、仕事をして生活している。やっぱそういうのも、ぜんぶ、捨てて行かなきゃダメか」

「……そうね」

 彼女が言った。ほんのすこしだけ寂しそうに。


 オレは大きく深呼吸した。そして言った。

「よし、わかった。……で、これからどうすればいい」

「とりあえず、着替えて」

「ふつうの格好でいいんだろ?」

 オレが確認すると、

「あ、そうじゃなくて」と彼女は手をふった。どういうことだ?


「ごめん」

 言うが早いかメグはオレに銃口を向けた。そして銃爪ひきがねを引いた……らしい。眩しくてなにも見えなかった。銃口がぱっ、と光った気がする。

「うっわ、なんだこれ」

 つぎの瞬間にはもう、お召し替えが済んでいた。


 ……ダサい。あえて言おう、全力でダサいと。

 オレが身にまとっていたのは未来の服だった。誰もが口をそろえて、あ、それは未来の服ですねと指さしてくれるようなやつだ。貸本時代の未来像だ。

 当然オレは茹蛸のように真っ赤になってメグに抗議した。


「しょうがないでしょ、こういうデザインなんだから! 弾をもはじく超強化素材ハイグレードなのよ?」

 逆ギレする彼女に、オレはなおも食い下がった。

「おまえ、着てないじゃん」

「着てるわよ!」

「どこが?」

 すると彼女の薄い胸元から、健康そうな太腿のあたりから、にうーっとメタリックな生地が伸び出してきた。なるほど、伸縮自在なのね。


「でもおまえ、それじゃいざ、ってときに腕とか脚を狙われるんじゃね?」

「その『いざ』は自分で判断するから、ほっといて。尾崎紀世彦だって年中モミアゲ伸ばしてないわよ?」

「尾崎て……おまえ歳いくつやねん」


 まあ、いいや。メグがやってるみたく普段は下着サイズに縮めておいて、上から服を着込めばいい。

 たしかに、いざ戦闘になったときに、全身装備(フルアーマー)にするのを忘れないようにしないと。

 全身……っ、


「おいメグ、頭は? 顔は、どうやって護るの?」

 すると彼女はフードをすっぽり被った。フード付きだったんかい、この服。

 さらに彼女はバッグから、なにやらゴソゴソ取り出した。バッグの存在にいま気づいたわ。

「はい、ゴーグル」


 言って彼女はそのひとつをオレに渡し、自らそれを装着した。フードのなかで一際大きなゴーグルがオレを見つめていた。

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