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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第二部 岩元恵美
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ハロー、ハロー

 岩元恵美は必死になって思い出そうとしていた。だが、どうしても思い出せなかった。

 なぜ、こんなことになったのか?

 なぜ、こんな場所にアタシはいるのか?

 深呼吸してみる。ハロー、マイネームイズ、メグミ・イワモト。昭和45年生まれの16歳、身分はいちおう高校生。


 だから、だから! いまは昭和61年6月のはず……だのに、ここはいったいどこなのかしら?

 とりあえず日本じゃない、と思う。

 だってこんな広大な景色、両サイドに麦畑がわっさー広がってて、遠くのほうに小高い丘がいくつも見える……。


 フランスだ。ここは19世紀フランスの、どこかの高地だ。恵美は直感的にそう思った。根拠はまったく、なかったけれど。

 いや根拠は、ないこともなかった。どこか懐かしい感じのする風景だった。一度も訪れたことはないはずなのに、どこかで体験したような。


 そう、アニメだ。子どものころ好きでよく観ていたアニメに、こんな風景が描かれていたような。

 あれは何ていうアニメだったかな。

 ……疲れているのかもしれない。二重の意味で疲れていた。この広大な土地を歩きどおしで、恵美はマジで疲れていたのだ。


 精神的にも疲れていた、っていうか、たしかに不満はあったかもしれない。この春、晴れて高校へ入学したのだが、恵美は学校に馴染めずにいた。理由は自分でも、よくわからない。

 6月のある日、恵美ははじめて学校をサボった。なんかどうでもよく思えてきて、学校へ行く途中に方向転換したのだ。

 ちょっとした気晴らしのつもりだった。それがこのザマである。


 道に迷った……っていうレベルじゃあ、正直ない気がする。恵美はいま、めっちゃ喉が渇いていた。


 肉体的な疲労といい喉の渇きといい、とりあえず、これは夢じゃなさそうだ。だから余計に質が悪そうだった。

 助けを呼ぼうにも、まわりに人が見当たらない。さっき、ひとりだけ農夫みたいのとすれちがった。

 でも、およそ話しかけられる雰囲気じゃなかった。彫りの深いいかにもヨーロピアンな感じだったし、日本語なぞ100パー通じないだろう。


 でもでも、目のまえでぶっ倒れてみせたら、さすがに助けてくれるんじゃないか。そう思ったが、もうおそい。

 彼とすれちがったのが、もう2時間くらいまえだから……。

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