ジープに乗って
「当然です」
そう言うと女将軍はソファから立って、窓際へ行った。
「……ダーリンと人間の女をふたりで行かせるのは癪だけど、あまり悠長なことも言ってられないし、ね」
「なにか、あったのですか?」
ベニ・ショーガ氏が即座に反応した。
「ええ」とレイチェル。「じつは、イエロー・ネコマリンとグリーン・マナリシが同盟を組むっていう噂があるのよ」
「ああ……そんな」
ベニ・ショーガ氏は気の毒なくらいに落胆した。色系統の名前が出てきたので、オレは彼に尋ねた。
「そのイエローとかグリーンって、|四天王(彩)(フォーカラーズ)のことか?」
「そうです。どういった勢力であれ、ふたつが手を組むということは、この里が狙われる危険性も倍増すると考えるべきでしょう」
「じゃあベニ・ショーガ氏、やっぱり、おまえも里に残ったほうがいいんじゃね?」
「いいえ、逆よ」
レイチェル将軍がぴしゃりと言った。
「こんな状況だからこそ、聖女さまにはここを離れてもらわないと。これでもし、レッド・プリンスまでもが同盟に加わるなんて言い出したら、目もあてられないわ」
イエロー・ネコマリン、グリーン・マナリシ、そしてレッド・プリンス。この短時間に|四天王(彩)(フォーカラーズ)の、いままでしらなかった名前が勢ぞろいしてしまった。しっかしサファイアのひとみだけ、どう考えても浮いているよな……。
けっきょく、当初の予定どおりだった。オレは里に残り、メグとベニ・ショーガ氏のふたりは危険な旅に再出発することになった。
正直、めっちゃ心細かった。
とくにメグ……これまで幾度も出会っては別れを繰り返してきた彼女だが、今回ばかりは行かせたくなかった。彼女と離れたくなかった。
ふたりの送り出しは夜半、秘密裡におこなわれた。さすがに歩き旅は効率悪すぎだろってことで、レイチェル将軍が一台のジープを用意してくれた。
オレは運転席のベニ・ショーガ氏にむかって言った。
「メグを……聖女さまを頼んだぜ」
「おまかせあれ」
「メグ、がんばれよ」
「うん……さあ、ベニーちゃん行きましょ」
淡白ぅ……。あまりに淡白な感じでジープは走り去ってしまった。まあそりゃ、スマホやタブレットでいつでも通信はできると言ってもさあ。




