女将軍
「人気者はつらいですね、ヨーメンマン」
ベニ・ショーガ氏が片目をつぶって言った。
「え、オレなの?」
「伝説の武道家ですから」
正直、べつの意味でつらかった。いまのオレは飛び道具くらいしか扱えませんよ?
でもまあ、たとえば逆の立場で、オレの街にジャッキー・チェンが来たらやはりキャーキャー言ってしまうだろう。
オレとメグ、ベニ・ショーガ氏の三人は、ふたりの護衛さんに付き添われながら、城塞都市のなかにある建物のひとつへと案内された。
オレらが通されたのは、ちょっと豪華な応接室だった。いちおう、それなりの待遇はされているらしい。
「意外と早かったのね、ベニ・ショーガ」
部屋の入口で声がした。女性の声だった。
「紹介します。こちらネ・コミュニティーの軍事を統括している、レイチェル・ダン将軍です」
レイチェル将軍は当たり前だが猫人間だった。が、性別は女性であるらしかった。これでもかと言わんばかりに胸と腰をゆらしながら、女将軍はオレらに近づいてきた。
「会いたかったわー、ダーリンっ」
ええーーっ!!
レイチェル将軍はオレらをガン無視でベニ・ショーガ氏に抱きついた。
「ちょ、ちょっと……ダメですって」
ベニ・ショーガ氏はマジで嫌そうに彼女をふりきった。
「あ、もしかしてベニーちゃんの彼女?」
となりでメグがニヤニヤして言った。
「ようこそネ・コミュニティーへ。私がレイチェル・ダンだ」
つかみはオッケーみたいなかんじで、女将軍はオレらに向き直って言った。
「はじめまして、ヨーメンマンです」
「はじめまして、メグリア・ぺぺ・ロンチーノです」
オレとメグがあいさつすると、レイチェルは呆気にとられたようだ。
「ちょっと、あんた、すごいお客さん連れてきたんじゃないの?」
「ええ……まあ」
ベニ・ショーガ氏が苦笑いで言った。
オレらはすすめられるままソファに腰をおろした。すると、さっそくベニ・ショーガ氏がことのなりゆきを説明しはじめた。
以下はベニ・ショーガ氏目線で語られた内容である。
まず、旅の途中でヨーメンマンとぺぺロンチーノに出会ったこと。
つぎに、三人で宿敵ブラックタイガーと戦ったこと。その戦いにおいて、チーノが聖女メグリア・ぺぺ・ロンチーノとして復活したこと。
そして、いま|四天王(彩)(フォーカラーズ)に挑もうとしていること。とりわけ、サファイアのひとみと因縁があるらしいこと。
話をすべて聞き終えると、レイチェル将軍はゆっくりと口をひらいた。
「で、そこの伝説の武道家だけ置いて、おまえたちふたりで旅に出ると?」
「そうです」とベニ・ショーガ氏。「聖女がそのように、お決めになったのです」
ジト目だ。レイチェルがジト目でメグを見ている。
「あ、あのアタシ、レイチェル将軍のダーリンを盗ったりとか、しませんからぜったいに」
メグがあわてて言った。




