三人のバランス
「そうだよ。考えたけど、たぶん、それしか方法はないの」
「どういうことです?」
ベニ・ショーガ氏が神妙な面持ちで聞いた。
「アタシたち三人で、このまま旅をつづけるとします。世界の果てまで|四天王(彩)(フォーカラーズ)を追っていくと。で、そのあいだにネ・コミュニティーが襲われたら、どうするの? すっごい遠くにいたら、すぐには戻ってこられないんだよ?」
「なるほど……」
「いや、『なるほど』て……おかしいだろ。その事態はこれまでも、そしてこれからも想定されることだろう?」
猫人間が力なく首をふる。
「サファイアのひとみはズル賢い。たぶん、里が近いこのあたりでは、けしかけてこないでしょう。ワタクシたちを遠くにおびきだしておいて、里を狙う……あの魔女なら考えそうなことです」
オレは頭をかいた。そして提案した。
「じゃあさ、思い切ってオレら三人で里を守ろうよ。そうすれば安心だろ?」
「だめよ」とメグ。
「どうして?」
「そんなことしたら、ひとみもその他の勢力も、里を攻撃するの一択になっちゃうじゃない」
脳細胞をフル回転させてみたが、やはり、メグの意見に従うしかなさそうだった。彼女の答えは、つねにベストなのだ。
「そっかー、それじゃあ、こっちの戦力を分散させるしかないのか……」
「うん、アタシが餌になって動けば、多少なりともパワーバランスを崩せると思うの」
「メグのボディガードと案内役は……やっぱベニ・ショーガ氏が適任か」
「そうだね」
「そうだね、て。フォローなしか」
するとメグは笑顔でオレの肩をたたいた。
「里の警護を頼んだよ、ヨーメンマン。伝説の武道家なんでしょ?」
あー、そういえばそんな設定だったような。いま思い出したわ……。
「うう……ミス・チーノ、……ヨーメンマン、ありがとうでやんす」
感極まって猫人間のキャラがやばいことになっている。
「敵を攻めなきゃ、はじまらない。里を守らなきゃ、どうしようもない。どっちが欠けてもだめだからね?」
「はっ」
ベニ・ショーガ氏が跪いた。
「お、おう……」
オレはいつものごとく、なんか微妙な感じだった。しかし聖女さまの統率力には頭がさがる。オーラさえ出ている気がした。
そういえば、はじめてメグと会ったとき、彼女はオレが未来の指導者になるみたいなこと言ってたよな……。
違ったのか。




