コミュニティ
「そっかー」とオレは頭をかいた。「じゃあもしゴーレムを撃っていたら、ブラックタイガーがそうしたように、また跳ね返し作戦でくるつもりだったのか」
「あるいは」
ベニ・ショーガ氏が頷いた。
「あの釜を撃つなと言ったのも、おなじ理由からか?」
「うん」とメグ。「釜全体から、わるーいオーラが出てた」
「そこまでお見通しか、すげーな聖女さま」
「えへへ……なんかもう、とまんないっす」
メグは照れながら舌をちろりと出した。
「これで、はっきりしましたね」
だがベニ・ショーガ氏の表情は対照的に硬かった。
「サファイアのひとみが、聖女を狙っているということです」
「うん」
ちょっと考えてオレは言った。
「やっぱり、どうせその|四天王(彩)(フォーカラーズ)とかいう連中を相手にしなきゃならんのなら、張り切りまくっている、ひとみちゃんからがイイんじゃね?」
「ご沙汰を」
猫人間はオレのほうをいっさい見ずにメグに頭を垂れた。そっか、ゆうてもオレらは助言、提案レベルだったんだ……。
「そうせい」
メグはどこかのお殿様みたいに、そう言った。若干イラッとした、ウソですしてません。
方針がきまったところで、ベニ・ショーガ氏に聞かなくちゃいけないことが山ほどあった。
まずは、この世界の勢力図だ。|四天王(彩)(フォーカラーズ)とかいう連中が、いったいどれだけの幅を利かせているのか。
そもそも、土地の面積はどれくらいあるのだろう? 人口はなんぼほどだろう?
そういった質問にも、猫人間は嫌な顔ひとつせずに答えてくれた。
「人口は600人ほど、です」
「いたたたたたっ」
メグがいきなりオレの頬をつねった。なにすんだよ……抗議しようとして、思わず踏みとどまった。彼女が冷たい目でオレを見ている。
『少なっ! 滅亡寸前か』
そう言おうとした矢先につねられた。メグはオレの心を読んだのだ。
「あっ、いやその……」
オレらのやりとりを見ていたベニ・ショーガ氏が助け舟を出してくれた。
「かまいませんよ、率直に言っていただいて」
「その……思ってたより少ないんだなーって」
「ワタクシたちの里『ネ・コミュニティー』について話しましょう」
猫人間はしずかに語りはじめた。
ネ・コミュニティーは猫人間のみの共同体でその数約600、オレらのような人間は存在しないらしい。ブラックタイガーは? とオレが聞いたら、あれは敵です、と一蹴された。
猫人間たちにとって、人間は基本的に敵であるらしい。
じゃあ、逆に人間だけの共同体って存在しないの? とオレが聞いたら、わかりません、と首をふられた。
そうか……このコンビニといい、街全体が廃墟化している様子を見ると、むしろ滅亡寸前なのは人間のほうであるっぽい。




