メグとシャラ
真っ暗な部屋でオレは尋ねた。
「オレを今すぐ連れて行くつもりか。……それとも、その予言とやらについて説明する余裕くらいあるのか」
「説明するわ、あなたがそうしろと言ったから」
メグはそう言ってデスク上の蛍光スタンドを点けた。まったく、人ンちのものを勝手に。
彼女の全貌があらわになる。ポニーテール、タンクトップにホットパンツという、いでたち。まだ少女だ。オレはガキには興味ない。
だが彼女の握っている銃がものすごい威圧感と説得力をもっている。
「つまりアレか、その予言をしたのはオレで、未来からおまえを送り込んだんだな。SFの定番じゃん、ジョン・コナーじゃん」
「ちょっと違うかな……うん? 同じかな」
「どっちやねん」
「……うっさいわね、シャラ」
なんでオレが怒られてんねん。てかシャラって……は、恥ずかしっ。アラフォーのおっさんが少女からニックネームで呼ばれるとか、マジで勘弁してほしい。
「アタシは未来から来たわけじゃない。でもあなたと一緒に、あなたの指導のもと、共通の未来を目指すの。それが予言の中身」
「指導って、オレが?」
「ええ、いまは訳わかんないでしょうけど、そのうちね。SFの定番でしょ?」
少女はドヤ顔である。腹立つわー。
「オレのことは、すべて調査済みか。どうやってこの部屋に入った」
「玄関のカギが開いてた」
「なんだって」
オレは玄関まで行ってそれをたしかめた。彼女の言うとおりだった。
用心深いオレが施錠をし忘れるなど、ありえない。サム・ターン錠のほかにドア・ガードまで、常にしているってのに。
「……つまり、おまえを迎え入れるために、オレ自身が意図的にカギをかけなかったってことか」
「そう、予言どおりね」
怖っ、予言怖っ。どうやら予言ってのは紙とかそういう外部媒体ではなく、直接オレらの記憶や身体に刻まれているらしい。
「おまえもその、予言に従って動いているのか」
「まあね、でも予言のすべてが明かされたわけじゃない。SFの定番でしょ?」
「ドヤ顔やめろ」
「ココアが飲みたい」
ちっ。
とりあえずヘンな客人に温かい飲み物をふるまってやった。しっかし、夜更けに少女と部屋でふたりきりなんて、通報されてもおかしくない状況だ。
それじゃなくてもこの部屋には銃がある。メグのを数えたら二丁だ。即通報ものだ。通報されっぱなしだ。
なんかもう、いろんな意味で後戻りできない気がした。