銅像
と、そのとき。
オレと猫人間が夫婦漫才をしているうしろで、とつぜん飛沫のようなものがあがった。巨大な釜からだった。
だがそれは水ではなく、ぷるんぷるんのゼリーみたいな……そう、さっき見たわらび餅ゴーレムだった。
今度はたった一体だが、デカさがハンパない。3メートルいやそれ以上か。あの釜はゴーレム製造機だったのか……。
巨大ゴーレムはいきなり襲ってきた。こぶしをブンまわしてくる。
どしゅっ!!!!
ベニ・ショーガ氏が電光石火の刀さばきでゴーレムの腕を斬りおとした。その隙にオレは「二丁拳銃」を構えることができた。
「シャラ、そいつを撃っちゃダメ!」
うしろでメグの声がして、思わずふり返った。
「えっ」
彼女はオレに取り合わず、猫人間にあらたな指示をとばした。
「ベニーちゃん、そいつを転ばせて」
「おまかせあれ」
言うが早いか、ベニ・ショーガ氏は巨大ゴーレムの脚を斬りつけた。
ほんと、やられるほうは堪ったもんじゃないが、見ている側はそのうつくしい動きに惚れ惚れする。
二本の円月刀をもった彼は、くるくると回転しながら、目のまえのすべてを切り裂いてゆく。
片脚をとられたゴーレムはバランスをくずし、ずーんと倒れこんだ。そこにメグのさらなる指示。
「銅像の脚を撃ってシャラ」
そして彼女は目で示した。銅像倒れます、からのゴーレムにブチあてる作戦だ。
オレは銅像とゴーレムのちょうど中間地点に移動し、銅像めがけて銃爪をひいた。
銅像の脚が吹き飛び、棒倒しのように巨像が手前に倒れてくる。
だが逃げなきゃいけないタイミングで、なんと、ゴーレムに足首をつかまれてしまった。
こいつ……冗談だろ?
既のところで猫人間がゴーレムの腕を斬り、オレを突き飛ばした。
銅像は猫人間とゴーレムを巻き込み、けたたましい音をたてて崩れおちた。
「べ……ベニ・ショーガ氏いいい!!!」
倒れたまま情けない表情でオレは叫んだ。
「だいじょうぶ、ベニーちゃんは死なない」
メグが近づいてきてオレに言った。
銅像に押しつぶされた可哀そうなゴーレムは、そのままピクリとも動かなくなった。と、棒倒しになった銅像のうえに、急に人影があらわれた。
「だから、ビビりすぎですってヨーメンマン」
ベニ・ショーガ氏だった。
「……無事だったのか、よかった」
オレは彼に近づいてその肩を叩いた。
「ぜったい間にあわないと思ったぜ?」
「たとえ鉄塔が落ちてきても大丈夫です。すりん、とかわしてご覧にいれます」
ま、オレには無理だけどね。すりん、なんて。




