リコール
とりあえずオレらは、ここ、ブラックタイガーが根城にしていた地下施設を探索することにした。
ベニ・ショーガ氏いわく、せっかく宿敵をたおしたのだから、戦利品のひとつでも持ち帰らないともったいない、とのことだった。まったく、しっかりしてるぜ。
「あ、そうだ」
オレはとつぜん思い出した。
「どさくさで忘れてたけど、ベニ・ショーガ氏、すげー刀使ってたよな。あれ、どっから出したの? そしてどこへ消えたの?」
「え……いまさら、ですか」
「だからあ、オレ記憶の一部をなくしてるって言ったっしょ?」
「めんどくさっ」
「そういうこと言うな、はいお願い」
すると猫人間の持っていたタブレット端末がいきなり二本の円月刀に変化した。うっわ、びっくりした……。
「この世界では、物質はかたちを変えることができます。もちろんコストがかかりますが」
「なるほどねー……えっ」
「どうされました?」
ベニ・ショーガ氏が怪訝な顔をしたが、オレはそれどころじゃなかった。あれを思い出したのだ。
「もしかして、この世界に……伸縮自在で弾をもはじく超強化素材の服なんて、あったりしないよね?」
「ワタクシの着ている服が、まさにそれですが」
「やっぱり……」
オレは愕然とした。すっかり忘れていたが、当初その未来の防弾服をオレに装備させてくれたのは、誰あろうメグだった。
あの装備はけっきょく、現実世界では、まやかしに過ぎなかった。
だがこれで、はっきりした。彼女はベニ・ショーガ氏のいるこの世界からやってきたのだ。オレの部屋に!
なんの因果かオレはいま、彼女の故郷に足を踏み入れている。……もちろん彼女はあのときのメグとまったくおなじではない。
彼女はメグリア・ペペ・ロンチーノとしてこの世界で復活した。それがなにを意味するか、ここで考えてもわかるはずがなかった。
「大丈夫ですかヨーメンマン……あっ、」猫人間は言いなおした。「シャラ」
「あ、いや」
オレはベニ・ショーガ氏の肩をぽんぽんと叩いた。
「ヨーメンマンでも、かまわないよ。呼び慣れているほうが、いいだろ」
彼はにっ、と嬉しそうな顔をした。
「そうですか、では引き続きヨーメンマンと呼ばせていただきます」
うしろでメグがクスッと笑った。そんな彼女を一瞥し、オレは猫人間に聞いた。
「オレ自身である……その、ヨーメンマンって何者だったんだ? ごめんな、気持ちわるい質問して」
「いいえ」とベニ・ショーガ氏。「あなたがご自分を取りもどすことは、この先の戦いにおいては必要不可欠です」
そして彼は教えてくれた。
「ヨーメンマンは当代随一の武道家です」
思わず、ため息が出た。武道家なのに拳銃とか使っていいのだろうか。ジャギか。




