リヴァイヴ
チーノの亡骸……て重いな、顆粒状になった彼女をまえに、ベニ・ショーガ氏は呪文の詠唱をはじめた。ほんとオールマイティだな、この猫人間は。
「チンプルルルリンのポイ!」
「えーっ! 大丈夫? ……そんなクオリティの呪文で。ひらがなで『の』とか入ってたけど」
オレの心配をよそに彼は膝をついた。
「はあ……はあ……かはっ」
「なんかスッゲー疲れてるけど。疲れてますけど!」
「あやうく死ぬところでした……たいへん危険な呪文です。人生で二回しか使えません」
ベニ・ショーガ氏は汗をぬぐいつつ言った。
あと一回いつ使うつもりだよ……それともこれが二回目なのか? とまれ、効き目のほうはたしかなようだ。
砂のつぶがパッと光ったかと思うと、つぎの瞬間、ヒトがあらわれた。
メグだった。
……いやチーノか、とにかくよかった。タンクトップにホットパンツといういでたちは、そのままで、ポニーテールがツインテールに変わっていた。
「シャラ……」
彼女はオレをむかしのニックネームで呼んだ。
「メグか」
すると彼女はいきなりオレに抱きついてきた。すわ、やっぱりチーノの要素もありか? だがそれも一瞬で、すぐに彼女はオレから離れた。
「ご……誤解しないでよね。アメリカ式のあいさつだからね?」
メグは顔を真っ赤にして言った。
「何式でもいいさ、おまえが無事なら」
「ご無事でなによりです、ミス・チーノ」
「猫ちゃんっ」
今度彼女はベニ・ショーガ氏に抱きついた。猫ちゃんて……まあ猫だけど。
「ベニ・ショーガ氏だ」
オレが紹介すると、メグはにっこり微笑んだ。
「あはははははは、なにそれヨーメンマンて……超ウケる!」
メグは腹をかかえて爆笑した。
「おまえだって、この世界じゃぺぺロンチーノだぜ?」
これまでの経緯をかいつまんで彼女に説明した。どうやら彼女はほぼメグで、チーノとしての記憶は残ってないらしい。
「なんか問題あるかな?」
「とくに、ないかと」
オレの問いに猫人間は即答した。
「それより、今後おふたりを何とお呼びすれば……?」
「アタシはメグで」
「オレはシャラで!」
「かしこまりました、ヨーメンマン」
わかってないやん……こいつ、わざとか。
でだ。たのしいフリートークもそこそこに、今後どうするかについて話す必要があった。悪の親玉であるブラックタイガーを倒したのだから、もうええやん、て気もするが。
「まだまだです」
ベニ・ショーガ氏がばっさりと言った。
「|四天王(彩)(フォーカラーズ)をすべて殲滅しないかぎり、この世に平和はおとずれません」
なんだその(笑)みたいな連中は。もしかして……




