打ちっぱなし
扉のむこうは微かにあかりが灯っていた。とりあえず敵が大挙して押し寄せるような事態にはならなかった。
オレら三人は慎重に奥へと進んだ。コンクリート打ちっぱなしの殺風景な空間だったが、ベニ・ショーガ氏の言ったとおり、めちゃくちゃ広かった。
左右対称にコンクリのでかい柱があり、それが等間隔でずらーっと奥まで続いている。
その柱に仕掛けられたわずかな光源は、なんとロウソクだった。気色悪かった。おまえを蝋人形にしてやろうか。
「敵です」
ベニ・ショーガ氏がいきなり言って、オレとチーノは思わずビクッとした。
「ここはワタクシにまかせて、みだりに発砲しないで。場所が微妙です」
猫人間は早口にそう伝えた。
そうか、とオレは理解した。こんなコンクリの柱だらけの場所で発砲したら、跳弾の問題とかあるかもしれない。
あるいは破壊力満点のオレの「二丁拳銃」が、柱をも粉砕してしまうのを彼は懸念したのか。
天井落ちたら怖いもんねー。
どちらにしても迅速かつ的確な判断だベニ・ショーガ氏よ、あっぱれあっぱれ、なんて思っているうちにソイツらは姿をあらわした。
ゴーレムっぽかった。身長が2メートルくらいある、だがプルンプルンだった。わらび餅みたいなゴーレムだった。
手にこん棒みたいな武器さえ持っていなければ、敵と認められないくらいだ。とりあえず図体どおり動きはおそい、でも……
こいつら何体いるんだ? 四方八方から、わらわらと集まってくる。
と、正面の一体がいきなり真っ二つにされた。
ベニ・ショーガ氏の仕業だった。見ると彼は両手に円月刀を持っていた。いったいどこから出したんだ……?
彼はものすごい速さで目の前の敵をなぎ払って行く。うーん、浦野さんもそうだったけど、この猫人間もまた敵にしたくないわ。
彼が数体斬ったところで前方の視界がひらけた。
「走ってください」
ベニ・ショーガ氏が叫び、オレとチーノはそれに従った……と思いきや。
後方で猫人間のようすが激変した。床に投げ込まれた何かに反応したようだ。ベニ・ショーガ氏は無心になってそれに齧りついていた。
「かつお節……」
チーノがつぶやいた。
えええええええええーーーーーーっ!!!!!?




