チーノとショーガ氏
「おーい、チーノ! ……ヨーメンマン!」
いきなり声がして、コンビニの入口から誰かが入ってきた。
「チーノって呼ばれてるのか」
オレは彼女に聞いた。
「うん、ぺぺロンチーノじゃ長ったらしいでしょ?」
「たしかに……で、彼は」
「ベニ・ショーガ氏よ」
ベニ・ショーガ氏は猫人間だった。いよいよファンタジー入ってきたな……。
口ぶりからすると、彼もオレことヨーメンマンの知り合いっぽかった。だからオレは事情を説明した。
「あらま……記憶の一部が?」
猫人間は目をクリクリさせて言った。
「でも大丈夫」チーノがフォローしてくれた。「彼の銃の腕前は衰えてないわ。いまもアタシを助けてくれたのよ?」
「そりゃ、よかった」
ベニ・ショーガ氏は安心したようだ。おいおいチーノ、あんまハードル上げんといてよ。
「で、なにか、わかったの?」
「おまかせあれ」
言って猫人間はタブレットっぽいものを取り出した。一瞬、浦野さんの石板を思い出してオレは顔をしかめた。
「ワタクシが集めた情報によりますと、どうやら、このコンビニが悪の地下組織に通じているようです」
「本当に?」
チーノは目を輝かせた。
「ちょっと待ってよ」オレは言った。「その情報よりさきに、チーノはこのコンビニにいたんだぜ?」
「それはヨーメンマン、あなたがさきに、ここへ入って行ったのよ。あやしいとか言って……そしたら急に敵におそわれて」
なるほど、そこでストーリーがつながるわけか。残念ながらオレは、会社の監視ルームから無理くり送られてきたんだけどね!
「確認させてくれ。オレたちは悪の? 組織を追っている。それでいいんだな」
「ええ、そうよ」とチーノ。
「悪の……組織ってなんだ?」
「闇の帝王『ブラックタイガー』率いる組織のことです」とベニ・ショーガ氏。
ブラックタイガーて……エビやん。そこはせめてパスタつながりで行こうよ。そういえば紅生姜も微妙にズレてるしな。
「わかった、さきへ進もう」
なんか、いつのまにかオレがリーダーみたいになっているし。まあ仕方ないか。考えてみれば、ようやっとオレは指導者っぽくなってきたのかもしれない。最初の予言だ。
「ワタクシの計算によりますと」
ベニ・ショーガ氏はタブレットを見つつ言った。
「ちょうどこの真下が通路になっている模様です」
彼はつかつかと進み、床を指さした。
「ヨーメンマンお願い、あなたの銃で吹き飛ばして」
チーノに請われてオレは、やらざるを得なかった。
「離れていろ」
かっこいい感じで言ったが内心ドキドキだった。だってひさしぶりなんだもの、発砲するの……。




