洋麺男
浦野さんに聞きたいことは山ほどあったが、とりあえずそうだな、あの石板のことから聞いちゃおう。
「あのう、さっきの石板みたいなやつですけど……」
「ああこれね」
言って彼女はまたそれを取り出した。チョークみたいなやつも。そしてさらさらっと、またなにかを書いた。
「今度はなんスか」
イシハラ → OUT
……ウソでしょ? その白い文字が目に入ったときには、すでにオレの意識はとんでいた。
立ち眩みのようなそんな感覚があり、ふたたび意識がはっきりしたとき、ひとりの少女がオレに抱きついてきた。
「ヨーメンマン! ……無事だったのね?」
ポニーテールにタンクトップ、そして風邪をひきそうなホットパンツ。メグだった。
言動が若干おかしいのが気になった。
「おいメグ大丈夫か、オレだよ石原だ。わかるか?」
「えっ」
すると彼女は気の毒なくらい動揺した。
「なに言ってるのヨーメンマン、アタシ、ペペロンチーノだよ?」
……なんじゃそりゃ。額面どおり受け取れば、彼女がペペロンチーノでオレがヨーメンマンになる。
まあ、だったらもう、それでいいや。いい加減めんどくさくなってきた。
「わるい……オレ、一部記憶をなくしたみたいだ」
「可哀そうなヨーメンマン……」
なんかスゲー調子狂う。このメグにそっくりなペペロンチーノちゃんは、えらくピュアで優しかった。惚れてまうやろ。
とりあえず、落ち着いて辺りを見回す。この散らかり具合からして、さっき画像で見たコンビニ内であるっぽかった。
まったく浦野さんめ……メグちゃうやん、ペペロンチーノちゃんやん。
「ケガしてないか? ふたり組に追われていたのか」
「うん大丈夫。助けてくれて、ありがとう」
なんだよオレが助けたみたいな流れになってるし。ってことは、浦野さんの「爆弾石」のこともこのコはしらないのか。
……まあ、いまそれを持ち出すのはやめておこう。これ以上話をややこしくしたら手がつけられない。
ふと視線をおとすと、なにか違和感があった。
あれっ、これオレの「二丁拳銃」じゃん!
西部劇よろしく、オレは腰から二丁の拳銃を提げていた。
どんな人物かしらないが、スゲーよヨーメンマン! 名前はヘンだけど。




