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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
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トークルーム

 新人(?)の浦野さんをつれて階下の監視ルームへ。

 階段を下っているあいだ、オレは無防備な背中をずっと彼女の視線に晒しつづけた。彼女がオレを殺るつもりなら、とっくに例の散弾銃をぶっ放しているだろう。


 いかんいかん、オレはかぶりをふった。いまオレといるのは、ふつうの新人さんだ。闇の女王なんかじゃない。

 闇の女王なんかと一緒に仕事ができるわけがない。


「おはようございまーす」

 監視ルームのドアを開けると、いつものごとく同僚の滝岡があいさつしてきた。はい、これも前回やりましたね。

 可哀そうに、過去オレに二度も撃ち倒された滝岡。その彼が華麗に復活しているのは、ある意味感慨深かった。


 オレのうしろに女性がいるのを見て、滝岡はいつもと違う空気に気づいたらしい。

「紹介します、こちら滝岡くんです」

 オレは浦野さんと滝岡を引きあわせた。

「浦野です、よろしくお願いします」

「……あ、た、滝岡です。よろしくお願いします」

 滝岡は若干しどろもどろだった。前回とまったくおなじリアクションで笑えた。


 でだ。ここからが問題である。

「えーと、この現場でどんな仕事をするかは、富田からだいたい聞いていますよね?」

 おそるおそる浦野さんに尋ねた。


「はい」


 あまりに淡白な返答にオレは拍子抜けした。さいですか、そりゃけっこう……。

 とりあえず、今日はオペレーション業務はきみに任せて、オレは浦野さんの新人教育にあたろうかな的なことを滝岡に伝えた。

 彼もオッケーしてくれた。ふう、やっとだぜ。やっとオレの日常がかえってきたぜ!


 初日のガイダンスを一時間ほど浦野さんにして、午前中の小休憩をまわすことにした。滝岡にことわって、オレと浦野さんを先に行かせてもらった。


「浦野さんてタバコ吸われます?」

「いいえ」

「じゃあ地下の談話室トークルームに案内しますんで、適当にそこで休んでください。自販機もありますよ」

「ありがとうございます」


 彼女を談話室まで連れて行き、そこでオレはおなじフロア内にある喫煙ブースへと失礼した。なんかタバコを吸うのも、ひさしぶりな気がする。

 と、スマホが急に鳴りだした。メグからか? と思ったが違った。彼女の番号はすでに登録済みだ。

 そうだよ、なんで彼女に電話するくらいのこと、思いつかなかったんだ……。ま、とにかくいまは電話に出ないと。


「もしもし」

「ア・タ・シ」

 オレはおもいっきり脱力した。……剛流さんだ。

「剛流さんスか」

「いまは浦野さんかな」


 マジで心臓が口から飛び出すかと思った。喫煙ブースのガラス越しに、スマホを持ってこっちを見ている浦野さんがいた。

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