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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
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夜がきた

 受話器を置いたあと、オレはしばらく呆然となった。考えを整理する必要があった。

 とりあえずこの無人……というか廃墟コンビニを根城にしよう。どうせどこまで逃げてもムダだ。しかるべきときに、しかるべきイベントが起こる。

 だってここはゲームの世界だからね!


 ふう落ち着け、まあ落ち着け。とりあえずメグだ。

 思えば最初っから彼女には翻弄されっぱなしだ。いまだにどこまで信じていいか、わからないところがある。

 剛流さんはメグには注意しろと言った。彼女がお邪魔キャラだとも。


 たしかに思いあたるフシがあった。その代表例が記憶や場面シーンの断絶だ。自覚しているものだけで二度、そんなことがあった。

 一度目はメグが最初に訪れた夜、いつのまにかオレの部屋から消えていたこと。そして二度目が、ついさっきまで彼女と車中で話していたのに、突然過去の戦闘シーンに引き戻されたことだ。


 さいわい大事には至っていないが、でもそうするとメグの意図がよくわからない。意図なんてないのかもしれない。ただ邪魔してるだけ?

 まあ邪魔されるのはよろしくないが、もともとカオスな世界ゲームだからなあ……って、いかんいかん。オレちょっとメグに甘いかも。


 剛流さんが言うには、オレがメグと接触しているあいだはコントロール不能みたいなことらしい。そりゃ問題ですよ。

 もちろん剛流さんの話を全面的に信用すれば、だ。彼女もまたメグとおなじくらい得体がしれない。でも彼女、えらく自信満々なんだよな。


 正直、メグと剛流さんだったら、剛流さんのほうを現時点では信じている。ってゆうか、彼女からあたらしい情報でんわを待つしか、いまのオレには動く術がない。


 メグのことは嫌いではない。けれど、そう何度も場面を飛ばされたりしたら、かなわない。

 さらに矛盾もある。

 ひとつは、最初メグは無敵スーツみたいな感じでオレに装備をあたえてくれたのに、じつはただのハッタリでした、なんてことがあった。

 もうひとつは、彼女が剛流さんを副司令と呼んだことだ。剛流さんに心あたりはないらしい。そもそもあのふたりに面識があるのかも、あやしい。


 面識といったら、そうだ! オレとメグは面識がある。どちらもゲーム内のキャラだから出会うことが可能なのだ。

 だが剛流さんはちがう。彼女はリアルな世界のプレイヤーだ。ここにいるオレらには、けっして手がとどかない世界にいる。


 だからだから、おなじ穴のムジナであるメグを信用しては、逆にダメなんである。

 おなじ火事場にいる者を信じてはいけない、これは生き残るための鉄則だ。信じられるのはレスキュー隊員だけ……それがたぶん剛流さんだ。



 夜がきた。こんなデタラメな、ウソっぱちの世界でも夜になるのだ。まあドラクエでも夜になるしな。

「おはこんばんちわ」

 声がして、思わずぎょっとした。見るとコンビニの入口にメグが立っていた。

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