表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
2/81

ためし撃ち

 さて、あらためて銃をためし撃ちしてみようとすると、これがなかなかに勇気が要った。これはオモチャだ、頭ではそう理解していても、万一のことを考えると足がすくむ。

 とりあえずタバコを一本だけ吸おう。ためし撃ちはそれからでも遅くはない。だって銃は逃げないからね……って、あっ!


 そうだよ銃弾を確認すればいいんだ。もし実弾っぽいのが装填されていたら、ためし撃ちは中止だ。とりあえず家のなかでは。


 あたりまえだが銃の扱いなんて慣れていない。だからマガジン? の抜き差しも勘に頼らざるを得なかった。

 このタイプはたぶん銃床がぱかっと外れるはずだ。あきらかに底の部分が別パーツっぽいし……だめだ引き抜けない。

 きっとロックされているのだろう。だから留め具にあたる装置を探した。ほら、こいつだ。


 装置を解除すると、いとも簡単に銃床からマガジンを引き抜くことができた。そして同時に拍子抜けした。

 十円玉だ。弾が十円玉だった。見たかんじ20枚くらいマガジンに装填されている。なーんだ、やっぱりガキのオモチャだったのか。


 安心してマガジンを元に戻し、何気なく銃爪ひきがねを引いた。あれ、手ごたえがない……あ、そうかマガジンをちゃんとロックしないといけないんだ。意外と本格的なんだなオモチャのくせに。

 さあ今度はちゃんとロックしたぞ。オレはサイドボードを狙って銃爪を引いた。


 びしっ、と音がして、そのあと十円玉が床に転がる音がした。

 想定内だった……たった一点を除いては。


 十円玉の飛んで行く、その軌道が見えなかった。考えられるのはただひとつ、ものすごいスピードでそれは発射されたということだ。

 すぐさまサイドボードの被害状況を確認した。

 すごい、堅いことで知られるメイプル材が2ミリほどヘコんでいる。陥没面は銃口とおなじ薄い長方形だった。なるほど自販機なんかのコイン投入口とおなじ構造だ。


 冷たい汗が背中を伝って行った。ひょっとして、いやひょっとしなくても、これはかなりの破壊力を備えた武器ではないか。子どものオモチャなんかじゃない。


 どうするよ、これ。オレは熟考した。タバコをもつ指先がふるえる。

 ちょっと威力のあるエア・ガンくらいの感覚でいいのか? それとも改造銃の領域に入ってすでにアウトなのか。

 だいいち改造したのはオレじゃないぞ? オレはただこの銃を送りつけられたんだ、見ず知らずの相手から。

 だがその相手はオレの個人情報にも通じているようで……。


 とりあえず銃を梱包されていた箱に戻し、箱ごとサイドボードに収納した。なんか高級な洋酒を大事に保管するみたいで、我ながら滑稽だった。

 酒、そう酒だ。酒でも飲んで今日はもう寝てしまおう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ