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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
19/81

放牧

「つまりアレっすか、ゲームでいうところの、貴女はコントローラーを握っている人で、オレは画面上のキャラといいますか盤上の駒といいますか……」

 そんな感じでオレは剛流さんに言った。電話のむこうの彼女がいまどんな状況か、もちろんオレには想像のほかだ。


「ま、そうね」

「えーっ! ……そんな簡単に、まだ心の準備が」

「場の空気でだいたい、わかるっしょ」

「そうだけど……」


「でもある程度、オレの自由意志も効いてますよね」

「そうそう、だから放牧スタイル? マイ(シープ)が狼さんに食べられないように、あれこれ環境を整えてあげる系のゲームよね」

「たのしいスか。少なくともオレは、ぜんぜんたのしくないス」


「ねえ石原さん」

 彼女はあらたまって言った。

「仕事なんて誰もやりたくないよね?」

「まあ、たいていの人はそうでしょうね」

「でも、どうせやらなきゃいけないなら、楽しんだほうが得だと思いません?」

「急に敬語ですね……ちなみに、これが剛流さんの仕事なんスか」


「あ、ごめん、撃手ガナーと通話できる時間がかぎられているの。本題に入るわ。ちなみにガナーっていうのは、あなたの表現を借りれば盤上の駒ね」


 ここまでのくだり前置きだったんかい、と一瞬思ったが、すぐに思いなおした。

 彼女はたぶんムダなことはいっさい言っていない。自己紹介し、オレがゲーム内のキャラで彼女がプレイヤーであることを伝えてくれた。

 それも簡潔に、ユーモアを交えて……。直感的にこの女性ひとはできるタイプだと思った。なんか営業の富田とおなじ匂いがする。


「どうぞ」

 オレはきわめてシンプルに促がした。

「ありがとう。例のメグちゃんのことだけど、彼女には注意して」

「メグが? ……彼女は味方じゃないんスか」

「彼女がそう言ったの?」


 言ったような言わないような……とりあえず、クイーン浦野が自動ドアを粉砕したとき、メグはオレを助けてくれた。

 そのエピソードを剛流さんに伝えた。

「あ、それとメグは、剛流さんのことを副司令って呼んでました」


「副司令? なにそれ知らね」


「マジすか……うっわ」

 にわかにメグちゃん大ウソつき説が浮上してしまった。だが、しかし。おなじ論理で剛流さんがウソをついている可能性もある。

「貴女とメグ、オレはどっちを信用すればいいんスか?」

「石原さんに任せるわ。どっちにしても、あなたはアタシのてのひらのうえ」


「言い方きついスね」

「時間がないから巻きで。アタシにはメグちゃんの動きが見えない。彼女があなたに接触すると、あなたまで見えなくなっちゃう。ゲームでいうところのお邪魔キャラ? それかバグ……」

 そこで通話が切れた。

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