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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
17/81

望みどおり

 さーて、どうすんべえか。この流れで行くと、建物のエントランスのところで闇の女王クイーンこと浦野さんが待ち受けているはずだ。

 いきなり大ボスですよ。

 まあ、すでに一度遭遇していて、彼女の登録銃「爆弾石イラプション」のことも少しは知っているのだけれど。その破壊力も。


 はっきり言って、あんなのをまともに食らったら即死だ。

 だからこっちも頭をつかって、できるだけ彼女と出くわさないようにしないと。ってゆうか、できれば一生会いたくない。


 でも彼女はオレに会いたそうだ。オレに好意をよせているわけじゃ、もちろんない。オレを倒したいのだ。

 たぶんそれはゲームの目的に関わってくることなんだろう。逆もまたしかりで、オレにとっても彼女は倒すべき宿敵なのかもしれない。


 だが、いまはまだムリだ。オレは戦闘の経験が浅すぎる。

 この世界ゲームのことだって、よく知らない。条件は浦野さんも一緒かもしれないが……いや、それはないな。

 彼女が見せたあの、にたーっとした表情。あれは余裕の笑顔だ。思い出したら背筋が寒くなってきた。さすが氷のじゃなくて闇の女王。



 いまオレがいる談話室は建物の地下にあるが、換気と明かり取りのために、窓ももちろん設置されている。

 オレは窓をあけて吹き抜けになっているスペースへ出た。

 ここには電源設備とかがあって、さらに非常階段もある。これをつたって行けば地上へ出られるはずだ。


 もちろん、どこにクイーン浦野が潜んでいるともしれない。それと遠隔操作リモートが可能な彼女の銃も。

 細心の注意を払って非常階段をのぼって行った。


 さいわい彼女と出くわすことなく建物の裏口へ出ることができた。ここまできたら一目散に逃げるのみだ。

 逃げるって、どこへ? ……どこでもいい、とりあえず会社からは離れよう。オレは走りだした。



 走りはじめてすぐ異変に気がついた。街に人がだあれもいない。

 車道ではクルマが、そのまま乗り捨てられている。コンビニを覗いても人っ子ひとりいない。いいねー、いよいよゲームっぽくなってきたねー。


 さーて、どうすんべえか。オレは本日二度目のセリフをつぶやいた。

 とりあえずメグっちに電話してみよう。そう思いスマホを取り出すと、屋外なのにバリ圏外だった。

 さもありなん。見たところ文明が崩壊してるっぽい世界だ。基地局だって機能していないだろう。


『この世界はなんでも望みどおりだよ』


 メグはたしかにそう言った。間違いないよね? だがオレの思うとおりには、ぜんぜんならなかった。空も飛べなかった。

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