おまじない
それからメグとああでもない、こうでもないと車で話し、軽くキレそうになったり逆にキレられそうになったりしながらも、ようやくオレはこの世界のルールをほんのちょっぴり理解した。
さてさて、それでも不明な点は山ほどあった。メグもいい加減うんざりみたいな顔をしたが、ひとつだけ、どうしても聞いておきたいことがあった。
これだけは譲れない。
それは、ほかの誰でもないメグ自身についてだった。彼女は一体どんな役回りなのか?
オレと浦野さんに関しては、なんちゃらっていう十円銃を「登録済み」らしいが、メグはどうなんだ。
彼女のは十円銃ではなく光線銃だった。オレは、はっきりと憶えている。
そのあたりをオブラートに包んでやんわり尋ねると、やはり彼女は険しい表情をした。が、観念したのかやがて、ゆっくりと口をひらいた。
「光線銃だよ……オモチャの」
「オモチャってこと、ないだろう」
またまたー、みたいなかんじでオレは言ったが、彼女はいたって真面目だった。
「だっておまえ、あれはジャケットとか着せちゃうスゲー銃じゃん。あの防弾ジャケットだって、念じるだけで伸縮自在の……」
言いながらオレはハッとした。そんなSFみたいな話が現実にあるだろうか。あり得る、だってここはゲームのなかだからね!
「よく見てシャラ、自分の姿を」
メグに言われて気がついた。オレのスーツ……あんなにボロボロだったのに、元に戻ってる。
「どういうことだ、これ」
「光線なんて、ただのお呪い。この世界はなんでも望みどおりだよ」
「じゃあさ、オレいますぐ、このゲームから脱出したい。めっちゃそう望んでるんだけど」
「それができればね。まあふつうに考えると、そこがゴールで、そのためにルールがあるんじゃないかって気がするけど」
「ルールって、銃に関することだけだろ? ……だいたい銃でなにをするのさ。クイーン浦野を撃ちたおせばいいの?」
メグは力なく首をふった。きっと彼女にもわからないのだろう。
カオスだ。この世界はカオスすぎる。なにをしてもいい、なんだってできる(一部を除く)。だが、なにをするべきか、その大事なところがわからない。
「あっ、そうだ」
話題を変えようとしたわけじゃないが、もうひとつだけ聞きたいことがあった。
「オレが登録したことになってる銃だけどさ、二丁拳銃ってヘンな名前だよな。オレ、一丁しか持ってないぜ?」
「二丁あるでしょ、自分で話しておいて忘れたの?」




