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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
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エントランス

 銃爪ひきがねを引いた。これで二度目だが一度目は部屋のなかでの、ためし撃ちだ。実戦でははじめてだった。

 もっと練習しておけばよかった、いまさらそう思った。

 だがこれが未来の指導者となる人物オレの実力か、オレの放った十円玉は一発で滝岡の急所をとらえた。


「ギャオウッ」

 滝岡はおよそ人間らしからぬ叫び声をあげ、額を押さえながらその場にうずくまった。オレは急いでヤツのもとへ駆け寄り、可哀そうだったけど、銃床で彼の手の甲を打った。

 またしても悲鳴をあげる滝岡の手から銃が落ちた。オレはそれを拾いあげるとポケットのなかに仕舞った。


 はやくこの会社から脱出しないと、そう思って階段を駆けあがった。

 上司とか同僚とか新人さんとか、申し訳ないけど、かまってられない。滝岡からして化け物になってしまったのだ。この建物にいる全員、化け物だと思ったほうが無難だ。

「石原さん!」

 建物のエントランスでオレを待ち構えていたのは、新人の浦野さんだった。


「きゃあ」

 オレが銃口をむけると彼女は悲鳴をあげた。ふつうはそうだよね、でもそれが演技かどうかオレには区別できないんだ。

「どいてくれ、さもないと撃つぞ」

 浦野さんは後退じさり道をあけた。オレは彼女に銃口をむけたまま自動ドアをくぐりぬけた。



 ドアのむこうで浦野さんがにたあ、と笑った。思わず心臓が凍りそうになった。



「シャラ、伏せて!」

 声が聞えたのと、目の前の自動ドアが砕け散ったのが同時だった。とっさに防御の姿勢をとったものの、あまりの衝撃でオレの身体は吹き飛ばされた。

 誰かがオレをずるずると引き摺ってエントランスから遠ざけた。健康そうな生脚が見えた。

「……メグか」

「そのまま、前だけ見てしゃがんでいて」


 数秒たったが浦野さんが追ってくる気配はない。メグもそれを確認してオレに声をかけた。

「立てる? 逃げるわよ」

 オレは身体をはたきつつ立ちあがった。すでにスーツがボロボロだ。内側に着込んだ防弾衣がなければ、とっくにあの世行きだろう。

 メグに引っ張られるかたちで、会社の駐車場に停めてある一台の車に乗り込んだ。

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