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十円玉が、なまら痛かった件  作者: 大原英一
第一部 石原鉄也
1/81

ギフト

 チャイムの音がした。

 アパートに独り暮らしのオレは、滅多なことではドアを開けたりしない。たいてい居留守を決めこむのだが、もちろん例外もある。

 その例外のひとつが、相手がオレの名前を呼んだ場合だ。表札は出していない。だから少なくとも、名前も知らずに勧誘してくる輩じゃない。


 オレはインターホンに備え付けのモニターを見た。どうやら宅配業者のようだ。


 宅配業者もそう、ひんぱんにやって来るわけじゃない。だが、いつ誰がなにを送ってくるともしれない。所属している派遣会社からかもしれない。

 とくに意識もせずに伝票にサインし包みを受けとった。ごくろうさまでした、そう言ってオレはドアを閉めた。


 伝票を見て思わず吹いた。発送日が2025年の昨日になっている。到着日はちゃんと2015年の今日だから、きっとただの凡ミスだろう。

 差出人をみると株式会社マンパワー・パラダイスとあった。オレの所属している派遣会社だ。

 いったいこの時期になにを送ってきたんだ、中元や歳暮の季節でもないしな、だいいちそんな贈り物なぞいままで、もらったためしがない。


 そんなふうに考えながら包みを開けると、なかから黒い箱がでてきた。そう、ちょうどスマホの化粧箱くらいのサイズだった。

 中身はなんだ、酒? 缶詰? それも一個だけ?

 小首をかしげながらオレは箱をあけた。なかを見て背筋に悪寒が走った。


 銃だ。たぶん、オモチャの。

 というのも、かたちからしてリアルな銃ではなく、どちらかといえば未来刑事が持っているようなやつを連想させる。宇宙刑事だっけ。

 発射口が丸ではなく薄い長方形だった。これはあれか、ビームでも出るやつか。


 一瞬、童心にかえって遊びたい気持ちになるが、いやいや待て待て。子どもか。

 オレは子どもじゃない、おっさんだ。派遣会社がこんなものを送ってきた理由が、まったくわからない。

 さっそくマンパワー・パラダイスに電話して問い質してやろう……そう思ってスマホを持ったとき、ふと別の考えが頭をよぎった。


 これには、もしかして、もっと深遠な意図が隠されているのではないか。たとえば陰謀みたいな。

 だとすればめっちゃ質が悪い。これを送りつけてきた人間はオレの名前と住所、所属会社まで知っているということだ。


 相手の意図はなんだ。なにが目的だ。まさか指令とか同梱されていないよな、オレは箱をひっくり返して隅々まで調べたが、生憎そういったものは出てこなかった。


 じゃあもう、とりあえず銃を撃っちゃうよ?

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