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7話

「華琳様を侮辱し、さらに我等姉妹まで愚弄したお前は絶対に許さん!華琳様の許しを得た今、我が七星餓狼の錆にしてくれるわ!」


「はぁ、どこまで未熟なんだ、お前は。」


「貴様ぁ!なおも私を愚弄するか!」


「ほんと猪はなんとかしろよ、、」


「誰が脳みそまで筋肉で出来ている突撃猪だぁ!」


「そこまで言ってないだろ!?」


怒鳴り声とともに、夏侯惇は剣を振りかぶり、こちらを斬りつけてくる。


流石、夏侯惇。まともに受けたら刀が折れそうだ。


だが、大戦を経験してない今の彼女は怖くない。


剣が振り下ろされるのに合わせて身体を僅かに引く。


服を掠める剣に焦ることもなく、振り切られた剣を左足を一歩踏み出すことで踏みつけ、同時に右に差してある刀を一息に抜き放ち、彼女の頸にあてる。


「少し冷静になれ。お前が激情のままに動けば、お前だけでなく、お前の部隊の兵が死に、さらには主へ不利益をもたらすぞ。」


「ぐっ!」


「そこまでよ!双方剣を引きなさい!」


ゆっくりと刀を引き、腰に提げている鞘に戻す。

夏侯惇はこちらを物凄い形相で睨みつけながら剣を引き、曹操に頭を下げる。


「申し訳ありません、華琳様。ご命令を果たすことができませんでした。いかようにも処罰を。」


「春蘭。あなたの武がすばらしいものであることは私が一番よく知っているわ。勝敗は兵家の常、気に病む必要はないわ。ただし、次には勝ってみせなさい!」


「は、はいっ!」


あー、なんか尻尾が生えてたらブンブン振ってそうな勢いだな、、

あっちの夏侯淵もほんわかした顔で見てるし、、


「さて、北郷、と言ったわね。」


っと、


「ああ。」


「あなたが天の御遣いかどうかはこの際どうでもいいわ。あなたの武、この曹孟徳の元でふるってみないかしら?」


「断る。今はまだやることがある。」


「貴様ぁ!華琳様のお誘いを「やめなさい、春蘭!」は、はい。」


「今はまだ、と言ったわね。そのやるべきこととやらはいつ終わるのかしら?」


「明言はできない。人を探しているんだ。それに、北の辺りを少し見てまわりたいんでね。」


「それが済んだら、私の元に来てくれるのかしら?」


正直なところはもう決まっている、決まっているが簡単に首を縦に降るのもおもしろくない。

やれやれ、おれもまだ子供だな。


「貴方の元に身を寄せる価値があると感じれば、あなたの元に留まろう。どちらにしろ一度は伺わせていただくよ。」


「そう。実際にこの私と見え、言葉を交わしていながら、そのようなことを言うの。武は大したものでも人を見る目は節穴なのかしら?」


「貴方の器が大きく、才気に溢れているのも分かる。まさに稀代の英雄だろう。だが、俺にも絶対に叶えなければならない目的がある。どんなに貴方の器が大きく、どんな大きな力も飲み込み、自らの血肉として使うことができるとしても、俺は俺の目的を叶えるためだけにあり、それを阻む障害なら英雄だろうが、覇王だろうが喜んで切り捨ててやる。」


「ふぅん。あなたの目的とはなに?」


「俺の愛した、、愛する人が笑っていられる世界を作ることだ。」


「、、そう。ならばこの私をしっかりと見ていなさい!覇王の器とはあなたの武も、目的も、この大陸さえも飲み込んで支えるものであると、我が誇りにかけて示してみせよう!」


その言葉を放った瞬間、先程とは比較にならないほどの圧倒的な覇気が溢れる。

自信に満ち、己の進む道にある艱難辛苦さえも楽しんでみせようという意気を見せる顔を見て


不覚にも、美しい、と感じ、


次いで、これこそが覇王、曹孟徳、と鳥肌がたつ。


「その強い意思、確かに受け取った。必ず、貴殿の元に伺おう。」


「待っているわ。ふふっ、私は欲しいものは必ず手に入れる。あなたも必ず私のものにしてみせるわ。」


「さて、それはそれは貴方次第だね。」


「ふふふ。そういえば、あなたのやることとはなにかしら?あなたを手に入れるためなら、多少は手を貸すわよ?」


曹操の言葉におもわず、肩を竦めてしまう。


「やれやれ、大変な方に目をつけられたようだ。人を探しているんだ。華佗という医者なんだが、、」


「医者、、あなたのいう目的に関係するのかしら?」


うっ!少し迂闊だったか、、


「まぁ、関係しなくもない、、こともないような、、」


「随分と曖昧な物言いね。まぁ、いいわ。華佗なら居るわよ、陳留に。」


「へ?」


「だから、華佗なら陳留にいるといったの。私が呼んだのだもの。」


「マジで!?」


「それがどういう意味かは分からないけど、本当にいるわよ。華佗に会いたいなら陳留までついてらっしゃい。」


「あー、それならお願いするしかないな、、」


「ふふっ、任されましょう。ところでそっちにいる3人は誰なのかしら?」


あ、、そういや、忘れてた。

うーん、なんとか三人はこの場を切り抜けさせないとな。


「あー、あの三人はおれが賊に襲われているところを助けようとしてくれた、旅の方なんだ。でも、」


「あなたが先に倒してしまってその機を逃した、というわけね。大体分かったわ。あなたたち、名前は?」


「はっ、はい!私は性は郭、名を嘉、字を奉孝と申します。」


「某は趙子龍と申す。」


「風は性を程、名を立、字を仲徳といいますー。」


「そう。私は曹孟徳よ。旅をしていると言っていたけど、女だけの連れ合いでなんのためにたびなんかしているの?」


「わ、私達は、いつか仕える主君を、さ、探すとともに、そ、その主君のために、け、け、見聞を、、」


「見聞を?」


「け、け、見聞を、、ぶーーー」


「きゃっ!」


「なんだっ!?」


え?なんで鼻血吹いてるの!?曹操も夏侯惇も呆気にとられてるよ!?


「あー、やっぱり出てしまいましたかー。はい、禀ちゃーん、とんとんしますよ、とんとーん。」


「ふがふが。(ありがとう、風)」


「いえいえー。」


「あの、、それって変な妄想したときにでるんじゃないの、、?」


いま、そんな要素なかった、、よね?


「あー、それはですねー、禀ちゃんは曹操様に憧れていまして、さらには曹操様が女性を閨にお連れになると聞いていましたから、実際に会って色々キちゃったんじゃないですかねー。」


「そ、そうなんだ、、」


うわー、流石にそれは、ドン引きだろ、、


「そ、そうなの。」


あの曹操まで弱冠、顔が引きつってるよ。

恐るべし、郭奉孝!


「まぁ、いいわ。あなたたちは士官を希望しているのかしら?さっき、主君を探すと言っていたようだけど。」


「某はもう少し、大陸を見てまわりたいと考えております。まだ会ってみたいと思う方もおります故。まぁ、面白そうな方を見つけた、というのもありますが、、ふふっ。」


「風も同じですかねー。禀ちゃんは確かに曹操様に仕えたいでしょうけど、このままだと間違いなく失血死するとおもうので、風たちと同じですねー。」


「ふがふが。(ちょっと、風!)」


「はーい。鼻血でなに話してるか分からない人は黙ってましょうねー。」


「そう。あなたたちも面白そうだけど、そういう理由なら仕方ないわ。ただ、どうせなら陳留へ寄っていきなさい。あなたたちの目的にも沿うはずだわ。」


「華琳様!このような得体の知れぬ者たちを連れていくなど!」


「ふふっ、春蘭。旅の者、しかも見目麗しい女たちがこんな賊が出る場所に放っていったら、それこそ私の名に傷がつくわ。それに私は今、とっても機嫌がいいのよ。」


まさに蕩けるような笑みで夏侯惇と言葉を交わす。

あぁ、夏侯惇の顔が緩んですごいことになってるなぁ。


「さて、北郷。そこの者たちも一緒に陳留まで来る、ということでかまわないかしら?」


「あぁ、こちらこそ宜しく頼む。」


「ふふっ、では、向かいましょうか。

あ、ちょっと待って頂戴。あなたを襲った賊はあそこに倒れている者たちで間違いないかしら?」


「ああ、そうだが、なにかあるのか?」


「秋蘭!」


「はっ!」


ずっとこちらを伺っていた、落ち着いた雰囲気の青い髪をしたショートカットの女性がやってくる。


「あの者たちの持荷を調べなさい。」


「御意。」


「一体なんなんだ、、?」


「私たちは少し探し物があってここへ来たのよ。それをあの賊たちが持っている可能性が高いというわけ。」


「なるほど。」


「華琳様。それらしきものがあったのですが、、」


「あなたがそんな言い方をするのは珍しいわね。どうしたの?」


「それが、、」


夏侯淵が差し出した巻物は血と土で見るも無惨な姿になっている。

あー、完全に俺のせいだな、、


「これではもはや読むことは難しいかと。」


「そう、、ならばそれは構わない。絶対に他の者の手に渡らないよう、今此処で焼き捨てなさい。」


「なんだか申し訳ないんだが、いいのか?まだ読めるところもあるかもしれないけど、、」


「いいのよ。もともと他の者の手に渡らないように探していたものだし、なにより、我が覇道は私自身でなすものよ。なにより、それ以上の宝が手に入りそうなんですもの。」


そう言って笑う曹操の顔には悔いる色は全く見られなかった。

よかった、、けど、申し訳ないな。

でも、収穫はあった。

俺の思いは曹操と相対しても揺れないこと、明確な敵対者としてではない程立や郭嘉、そして、戦場以外で見る曹操の姿。

俺の道はもう決めた。

だが、そのためにはもっと色々なことを知らなければならない。

覇王にも、運命にも、負けるものか!


「さぁ、陳留に戻りましょう。」


曹操が告げ、俺たちは陳留へ向かって進みだした。



次回はやっと街にいきます。

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