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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第六章:放浪編Ⅱ 
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第十三話:朝ご飯

*警告 この話にも微妙に【変態表現】が含まれます。

    微妙だろうがなんだろうが、変態である事実は揺るぎません。

    苦手な方は飛ばしてお読みいただけると幸いです。


また、アルとエリシアのイチャつきがしつこいので、そういうのが嫌いな方も飛ばしてお読みいただけると幸いです。



 エリシアはユキだった。

 エリシアがおかしくなった理由は俺に誠司を重ねて見ている罪悪感だった(多分)。




 重ねるもなにもご本人なのだが、普通、転生先で前世で好きだった人の生まれ変わりに出会うなんて思わないだろ?


 いや、物語とかじゃよくあるけどさ。実際あったらビックリだぞ?


 そもそも転生自体ビックリだというのに。




 問題は、エリシアがあまりにもそっくりなのに気づかなかった俺だが、ユキが死んでしまったことは思い出したい記憶ではなかったし、転生時のショックで忘れてても不思議は…ないのかなぁ?






 何はともあれ、本気で責任をとらなきゃなぁ……。





俺は、俺に抱きついて気持ち良さそうに眠っているエリシアの頭をそっと撫でた。




「……んぅ~。アル~~ぅ…」



 エリシアは幸せそうな顔で寝言を言った。うん、可愛い。

 



 俺は首だけ動かして窓の外を見ると、日が高く昇っているのが見えた。

 ……推定時刻、午前十時。

 これは、二人で寝てるのバレてるかもなぁ…。

 父さんと母さんに何て言ったものか。





 ……というか、この世界的に結婚前にこういうことをしちゃうのってどうなんだ?


 貴族の一夫多妻は普通にあるこの世界だが、そのへんは調べてないので分からない。


 まぁ、何か問題があっても何とかしてみせる。



 せっかく転生して<力>を手に入れたんだ。そんな大層な力じゃないし、全てのものからエリシアを守れるなんて自惚れてはいないが、頼れる人たちもいるし、エリシアもいる。

 


 

 俺はエリシアの寝顔を眺めながら微笑んで――――あれ?

 いつの間にかエリシアの髪の色が白髪から白銀色に変わっている。

 ちょっと光沢が増しただけだが、銀っぽい。



 偽装魔法でも使ってるのかと思ったが、魔力の気配はない。

 眉毛と睫毛も同様。他の毛――――は無いか。

 


 

 そんなことを考えていると、エリシアがぼんやりを目を覚ました。

 俺と抱き合って寝ている状況に気づいて顔を赤くしながら口を開いた。



「…お、おはようございます……」

「おはよう、エリシア」





「あの…アル?」

「どうした?」




 エリシアは一瞬自分の体に目をやってから、遠慮がちに俺を上目遣いで見つめて消え入りそうな声で囁いた。




「……ゆめじゃないですよね?」

「…そうだな」




 すると、エリシアは顔を真っ赤にして俺に抱きついていた腕を外したが、何を思ったかすぐに抱きつきなおした。




 ……よくわからんが可愛いような気もするし、別にいいか。


 それより、もっと大事なのは――――。




「エリシア、もう昼前なんだ」

「――――ほ、ほんとです!」



 そう言うと、エリシアは慌てて起きようと―――。

 したように見えたが止めて、口を開いた。



「…アル、夏休みです」

「いや、それはそうなんだが。……父さんと母さんに何て言うよ?」



 遠まわしに二人で寝てるのがバレてるんじゃないかと言うと、エリシアが真っ赤になって慌て始めた。




「……え、えっと!? あっ、もしかして起こしに来てたり―――!?」

「いや、全力でドアに結界張っておいたから平気だ」




 たまに眠過ぎるときにも結界を張るが、片手間だ。

 今回は全力であり、あからさまに怪し過ぎるが中に入られたということはない。

 入られれば感知するからな。




「で、でも……私を起こしに行ってたら、いないのがバレちゃってますよね……?」

「まぁ、俺と寝てるのがバレてるか、エリシアが失踪したと思われたかどっちかだな」




「ど、どっちもこまります……」

「まぁ、なんとかなるだろ。とりあえず起きようぜ?」




 俺は起き上がると、ベッドとかエリシアの体とか、色々大変なことになってることに気づいた。……いや、魔法があるから平気か。




 服がどこに行ったのかと、きょろきょろしているエリシアに不意打ちで浄化魔法を掛けてみた。浄化魔法は浄化された箇所がかなりくすぐったい術だが。





「<ピュアフィケーション>!」


「――――――ふひゃぁ!?」




 俺の手から放たれた白い閃光が油断しきっていたエリシアに直撃。

 体の隅々まで浄化してあげると、立ち上がろうとしていたエリシアは再びベッドに崩れ落ちた。エリシアは恥ずかしさと悔しさが9:1くらいの感じで俺を睨んでくる。

 


「ぅ~~! アル…!」




 俺はエリシアが反撃する前に頭を撫でてやった。

 途端にエリシアは幸せそうな顔になる。


 ……いいのかそれで。




 と思ったら、エリシアが俺の胸に右手を当てて――――。




「<ピュアフィケーション>!」


「―――――うおっ!?」




 俺は、体の隅々まで浄化される感覚に襲われた。

 間違いなく嫌な気分ではないんだが……なんというか。

 俺は、してやったりと得意そうな顔をしているエリシアの唇を奪い、魔力をエリシアの体に流し込んでやった。




「――――――んぁっ!?」




 エリシアがバタバタと暴れるが、エリシアが本気で暴れたらドラゴンなので俺より力はずっと強い。嫌がってるわけではないと判断し、そのまま舌をエリシアの口の中に侵入させた。




 エリシアは驚きに目を見開くが、すぐに大人しくなった。






……







「……アルはえっちです」

「いや、エリシアが誘ってくるから」




 結局、また浄化魔法をかける羽目になった。

 耳まで真っ赤になったエリシアは、俺にじと~っとした視線を送ってくる。




「……さそってないです」

「ヘンなところまで浄化するからだろ」




「アルがしたのが先です!」

「んじゃ、エリシアが誘いに乗るからってことで」



「うぅ~~…!」



 腕で胸とかを隠して俺を睨みつけてくるが、残念ながら全く怖くない。むしろ可愛い。

 頭を撫でてやると、気持ちよさそうな顔になった後、思い直して睨んできた。


 さすがに何度も通じないか。

 仕方ないので、話を変えることにした。



「エリシア、お腹すいた」

「そうですね……」



 なんかもう、お昼前の微妙な時間なのでご飯を食べるのは難しいかもしれない。

 しかし、エリシアは不満そうな表情を引っ込めて笑顔になった。



「じゃあ、私がアルにご飯をつくります!」

「おおっ!」




 とりあえず服とシーツも浄化し、服を着た俺たちは笑顔でベッドを降りて―――。

 エリシアがこけた。



「―――――あぅっ」

「うおっ、大丈夫か!?」


 

 エリシアが立ち上がれずに崩れ落ち、俺は咄嗟に支えに入った。

 やべっ、やりすぎた。

 


「あぅ……」

「えーと、ごめんな?」



 ものすごく恥ずかしそうなエリシアの軽い体を腕で支えながら謝ると、エリシアは真っ赤な顔で頷いて、小さな声で囁いた。

 


「……アルになら……してもらってうれしいですから…」


「……エリシア、もういっかいやりたくなるから勘弁してくれ」




「――――ふぇっ!?」




 エリシアがもっと真っ赤になるが、さすがにこれ以上はエリシアの体によくないと思うので自重しよう。いくらドラゴンでもなぁ……。いや、ドラゴンの基準知らないけど。



 とりあえず、エリシアにご飯を作ってもらうのは無理かなーと思ったのだが…。



「……アルに食べてもらいたいです…」



 とのこと。なんなら魔法で調理もできるということで、とりあえずキッチンまで行ってみることになった。



 立ち上がれないエリシアを背負ってやると、エリシアはうれしそうに腕を回してきた。




 そんなわけで、エリシアに偽装魔法を掛けなおした後、結界を解除して二人で和やかな空気になりながらキッチンにのんびり向かうと、キッチンではちょうど母さんと父さんがイチャついているようだった。俺たちも人のこと言えないけどな…。



 


 俺は見つかる前にエリシアを降ろすと、二人で何食わぬ顔で入っていった。



「父さん、母さん、おはよう」

「お、おはようございます」


 

 エリシアが若干不自然な気もするが、まぁ許容範囲だな。

 父さんはにこやかに軽く手を上げ――――。




「アル、ちゃんと優しくしてやったのか?」

「へ、何が?」



 父さんめ、いきなり何を言いやがる。

 俺は完璧にしらばっくれた。我ながら完璧な演技だった。

 父さんも「なんだ、違うのか」という顔になった。やはり鎌を掛けてきただけか。



 だが、やはりというべきか――――。




「エリー、顔が真っ赤だけど大丈夫?」

「だ、だいじょぶです!」


 

 母さんがにこにこしながらエリシアに話しかけると、声が変に上擦ったかな~り不自然な返事が返ってきた。父さんと母さんが顔を見合わせてニヤニヤし始める。



 父さんがニヤニヤしながら再度俺に問いかけてきた。



「アル、ちゃんと優しくしてやったか?」



 ……どっちにせよ、エリシアに隠し事は無理だな。

 仕方がないので溜息をついて両手をあげ、降参のポーズをとり、エリシアに問いかけた。




「……少しは優しかったよな?」


「……たぶん…です?」




 大分やりすぎており、優しいも何もあったもんじゃないと思うのだが、エリシアは消え入りそうな声で肯定してくれた。




 結局その後、エリシアにご飯に焼き魚に味噌汁という、なんとも和食なご飯を作ってもらって食べた。かなり美味しかった。

 

 



 ……時間的にお昼ごはんであり、俺の朝ごはんはエリシ―――いや、なんでもない。


 




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