第八話:銀の剣
エリシアが家族になってから約一週間。
「アルっ、おきてください~~~~!」
「おにい~ちゃん~~~!おきて~!」
相変わらずだった。
むぅ、静かに寝させてもらえないものか・・・
え、俺が悪い?
ぐぬぅ・・・・
「だが、朝の惰眠は譲れない!守りたい布団があるんだぁぁぁ――っ!」
「いくぜ、信頼・安心・安全!<布団ディフェンスver.2!>」
――布団ディフェンスver2――
ただの布団ディフェンスにあらず。
魔力を込めて防御力を300布団ポイントアップ!
こう見えても魔術である!
「お兄ちゃんはわたしが起こすんだもん!」
そういうと、リリーは手に魔力を集める!
「お兄ちゃんにさわやかな朝を!<フレッシュ・スプラッシュ!>」
リリーの手から水流が飛び出す――!
「甘いぞリリー!布団式魔力装甲、展開!」
俺は、布団に魔力を込めて対抗!
――バシュウウウウ
布団が白く輝き、水を弾く!
「ううっ、さすがお兄ちゃん・・・!」
リリーはノリがいいよなぁ
「アル、無理にでも起きてもらいますっ」
エリシアも参戦。
「いいだろう!受けてたつ!」
さあこいエリシア!受けて経つぜ!
「・・・布団に潜り込みながら言ってもかっこよくないです」
エリシアの言葉が布団を貫通し、俺にダメージを与える!
「――ぐはっ」
「その、せっかく普段はかっこいいんです、はやく布団からでてください」
「え、そう?」
エリシアの言葉に心が動いた。
「そ、そうです・・・」
若干恥ずかしそうなエリシア。
「だがっ!昨日の俺とは違う!二日連続で同じ手で起きたとあっては男としてのプライドが立たぬ!」
・・・昨日はこれで起きちゃったんだけどね?
「その姿のどこにプライドがあるんです・・・?」
エリシアに言われてしまう。むぅ。
「滲み出てるだろ?」
「ダメそうな何かなら・・・」
辛辣なエリシア。
やめて!俺のライフはもうゼロよ!
「男なんてみんなダメなもんさ?」
ダメじゃない男の皆様ごめんなさい・・・
つい苦し紛れに・・・
と、俺は魔力を察知。
リリーの こうげき!
「あれくるう水流、おふとんを押し流し、お兄ちゃんをおこせ!
<ハイドロストリーム!>」
「防げ!<シールド!>」
――ズガガガガガ
アルには きかなかった!
「お兄ちゃん、強すぎっ!」
リリーは悔しそうだが、負けてやる気は無いぜ!
「アル、もう5分たちましたよ?」
エリシアに言われるが・・・
「・・・俺の答えは決まっている。俺はぜってぇ自分の意思はまげねぇ!それが俺の布団道だ!」
「しかたないですね・・・」
エリシアは、そういって魔力を集める!
「白き炎は私の意志に従う――布団を焼き尽くせ!<ヴォルカニック・ブラスター!>」
白き炎の極太レーザーが現れ、俺の布団を狙う!
エリシアの炎も白いのだ!白ドラゴンだからか?
「――って、布団に罪は無いだろう!?」
布団を焼こうとするエリシアに断固、抗議するぞぉぉぉ!
「アルのためなら布団を焼くのは仕方ないです」
「―――クッ、俺の相棒は守ってみせる!」
俺も魔力を集めて、対抗する。
「白き雷は我が意思に従う――炎のみを防ぎ、退けよ!荒れ狂う白雷の宴!
―――<サンダーストーム!>」
――ズガピシャドガーン!
白い雷と白い焔が激突、相殺する。
「お兄ちゃんを捕獲せよ!<アクアバインド!>」
リリーの奇襲。だが魔力で気づいてる。
「水を蒸発させよ!<ファイヤ・ストライク!>」
――バシュウウッ
放たれた水の鞭を、俺の炎が蒸発させる。
「布団を燃やすは白き火炎!降り注げ!<ヴォルカニック・レイン!>」
「雨を防ぐは風の傘!<エア・アンブレラ!>」
――ジュガガガガ
さらに、追撃で布団を狙うエリシアの焔の雨を、俺の風の傘が防ぐ!
「お兄ちゃんを起こすは水の爆弾目覚まし!<ウォーターボム!>」
「リリー――!?爆弾目覚ましの意味違うだろ!?」
「お兄ちゃんは渡さないもんっ!」
「・・・・」
無言のエリシアだが、謎の迫力がある――
「白き竜に誓いを立てし聖なる焔よ――」
――まて、魔力量がおかしい!?
「今、古の盟約の遂行を求めん――」
「エリシア!?」
「我が敵のみを焼き尽くす劫火――」
――嘘だろ、おい
「彼の布団を焼き尽くせ――!」
――俺の相棒になんの恨みが!?
「<――エンシェント・ホーリーフレア!>」
――ああ、もう!
「我を守るは白銀の電光――」
「天空を司り、虚空をも切り裂く――」
「万物を無に帰す至高の一撃――」
「我と、我が仲間を守れ――」
「<――プラズマ・ボルテックス!>」
――ドガーン!
――ゴァァァァァッ!
――ズガァァァァン!
―――俺の布団はなんとか無事だった。
「ううっ、お兄ちゃんはわたしが起こすっ!」
「布団さん、ごめんなさい。燃えてください!」
―――訂正、まだ無事だった。
とにかく、やばい!こんなときは――!
「おはよう!起きた!俺起きた!布団に罪はない!」
――ふう、これなら・・・
「・・・お兄ちゃん、わたしが起こしたよねっ?」
「アル、お布団を守るために起きたんですよね?」
「え?ああ、まあ、布団のため・・・かな?」
にっこり微笑むエリシア。可愛いんだが・・・・本気で布団を焼きにきたよな?
「うう~、わたしもおふとんねらうっ」
リリーも物騒なことに!?
なぜだ!?
「えーと、二人とも、特にエリシア。布団に罪は無い。焼いたりしちゃダメ!」
「アルなら守ってくれるって、信じてますから・・・」
エリシア!?絶対何か間違ってるよな!?
「お兄ちゃんを起こしたいんだもん・・・」
と、リリー。
「お兄ちゃんは惰眠を貪りたいんだもん・・・」
そう、惰眠を貪りたいんだよ・・・俺は。
「とにかく、布団を焼くのは禁止!あと、切り裂くのもダメ!」
「・・・わかりました」
「・・・は~い」
――よかった、わかってくれたか。
「アルを焼くなんて・・・でも、アルがそう言うなら――!」
「待て待てまてーーーー!焼くなよ!何も焼くな!」
エリシアの衝撃発言に、俺は若干飛び上がってしまった!
「じゃあ、起きてください」
「無理」
「じゃあ私も無理です」
「・・・」
「・・・」
「――ごめん、相棒。」
「エリシア、焼くなら布団にしてくれ。」
こうして毎朝の布団防衛戦は苛烈を極めていった――!
――で、朝食後。
「リック、アル、今日から父さんが剣術を教えるぞ!」
と、父さん。
「よしきた、父さん!アル、負けないぜ!」
リック兄さんは嬉しそう。
「なにおぅ、兄さんには負けないよっ!」
俺も乗っかっとこう。
「お父さんっ、わたしもっ!」
リリーも乱入。
「ん、リリーもか?オーケー、わかった!エリシアはどうする?」
父さんがエリシアを見て言う。
「それじゃあ、私も!」
エリシアも参加のようだ。
「うふふっ、ケガしたらお母さんが治してあげますからねっ」
母さんも何故かやる気。
――いつぞやの中庭の広場。
え~と、7話ぶり、約1年2ヶ月1週間ぶり・・・かな?
「よしっ、いいかーみんな。剣の修行に必要なものは?」
「忍耐!」
「剣!」
「努力!」
「友情!」
「勝利!」
上から、兄さん、俺、エリシア、リリー、母さん・・・?
「クリス・・・?」
父さんが母さんに若干呆れ目線。
「つい参加したくなって・・・」
バツが悪そうな母さん。
「クリスは習うまでも無いだろう?え~、ごほんっ。今回は剣を配ろうと思う!」
父さんはどこからか木の箱を取り出した。
「やるな、アル!」
「父さんは分かりやすいから」
「確かに剣は必要です」
「さすがお兄ちゃん!」
「ぐすん、お母さん仲間はずれ・・・」
「まず、リックには炎の魔法剣、<ブレイザー>」
リックに真紅の両手剣が渡される。
デカイ。重そう。
「おお~。ありがとう父さん!」
「アルには風の魔法剣<アリアティル>・・・ごめんな、雷は無かったんだ」
エメラルドグリーンの片手用の両刃長剣をもらう。
「ううん、ありがとう、父さん。すごい嬉しいよ」
「ふふっ、次にリリーには水の魔法剣<リーシア>」
リリーには軽そうな青い片手剣。
「お父さん、ありがとうっ!」
「エリシアにはちょうど白い炎の魔法剣があったんだ。銘は<エルデイル>」
俺と同じような形の白い長剣。
「その、こんなに良い物を・・・いいんですか?」
「もちろん!かわりにお父さんとよんでくれると嬉しいな」
「はい、ありがとうございます。お父さん!」
「うふふっ、私はお母さんって呼んでね」
「はいっ、お母さん!」
嬉しそうに笑うエリシア。
(微笑ましいねぇ・・・)
「アル、これも渡しておく。」
そういって父さんが渡してきたのは、白銀の長剣、<アウロラ>だった。