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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
Episode:Snow
76/155

第三話:Light fall [2]


 そして、事件は午後9時。風呂にも入って歯磨きも終わり、まさに寝ようとしているときに起こった。



「「 きゃぁぁぁぁぁ――――――!? 」」



 平和な我が家に、突如として響く二人の少女の悲鳴!

 俺が慌てて部屋を飛び出し廊下に出ると、ユキと理香が廊下の隅で開け放った理香の部屋の中を恐怖の表情で見つめて震えていた――――!



「―――――どうした!?」


 声を掛けつつ二人に駆け寄ると、理香が部屋の中を指差しながら言った。


「お、おにいちゃん! ごごごごごg&%#!」

「え…? 五目寿司が食べたい?」


「ご、ゴキブリです!」


 ユキは少し震えながら俺に抱きついてきつつ、何言ってんだか分からない理香の代わりに教えてくれた。どっちの方が怯えてるのか甲乙つけがたいものがあるな。


 …仕方ない。俺もゴキブリは好きじゃないんだが。


 

 俺と理香の部屋は2階にあるので、俺は階段を降りて洗面所に向かった。

 ……そんなにゴキブリが嫌なのか、ユキと理香もついてきた。誰か見張ってたほうがいいと思うのだが。


 

 俺は、洗面所の引き出しからあるものを取り出した。


 何はともあれ、こういうときは―――――。



♪ パラパラッパラー!



「――――ゴキブリ撃退スプレ~~!(旧青ダヌキっぽく)」


「お、お兄ちゃんエモン!」

「―――似てます…!」




 そして、再び理香の部屋の前。(ドアはさっき閉めた)


 俺はスプレー片手にいざ、出陣!


「それじゃあ、行ってくる…!」

「お兄ちゃん…! やっぱり地球破壊○弾のほうが……!」



「いや、そんなの無いし。そもそもソレはネズミ撃退用だ!」

「Gはネズミより危険だもん!」


「あー、はいはい」


 理香を適当に流すと、ユキがすごく真剣な目で見ていた。



「あ、あの…!」

「…なんだ?」



「えっと、誠司…さん?」


「―――――むず痒い!? 誠司でいいよ。どうせそこまで年変わらないだろ?」



「あ、はい。14歳です」



「「……は?」」



 俺と理香は、思わずまじまじとユキを見てしまった。一つ下?

 12歳くらいにしか見えないんだが。

 つい上から下までじっくり見てしまい、ユキが真っ赤になる。



「あ、あの…?」



「―――――はっ!? と、ともかく。誠司でいいよ!」


「は、はい。誠司、頑張ってください!」


「おう、任せろ―――っ!」



 そして、暗黒世界ゴキブリべやへの扉は開かれた――――!



十五分後……。




「どこにもいなくね?」

「「 ええ~~~っ!? 」」


結局、色々探してみたのだが見つからなかった。やはり見張りは必要だったか。



「いるよお兄ちゃん! 感じるもん、ヤツの邪悪な波動を…!」

「いつから電波になったんだお前は」



「見える…。私にもGが見える!」

「はいはい。赤い人なら『私もニューハーフのはずだ…!』ってやってこいよ。スプレー貸してやるから」




「お兄ちゃんは今、赤い人のファンを敵にまわしたよ!?」

「いや、冗談だって。それより俺は疲れたからもう寝る。頑張れよ」



 一応言っておくと、俺も赤い人は大好きだぞ。

 理香が「そんなぁ~!?」と縋る様な目で見てくるのを無視し、俺は自分の部屋に戻ろうと――――。

 



「誠司……」

「―――うおっ!?」


 寝巻きの裾を遠慮がちに掴まれて振り返ると、ユキが泣きそうな顔で俺を見ていた。


「ゴキブリはいやです……。だからその、誠司の部屋で寝させて下さい…!」



――――なんだと!?

 

 それはいくらなんでもマズかろうと理香に視線で助けを求めたのだが――――。


「それだよ! 私もお兄ちゃんの部屋で寝る!」

「――――お前ら落ち着け! Gなら何もしてこないって! 俺のほうが危ないぞ!?」



「お兄ちゃん! 妹がGに<ピー!>されたりしてもいいって言うの!?」


 自主規制入ったぞ!? 

 しかもそれを聞いて、ユキが今にも涙が溢れそうになってるし!?




「落ち着け! Gがそんな自主規制が必要なことするわけないだろ!?」


「だって、寝ている間にGが体中を這い回るかもしれないんだよ!?」


「せいじ……」


「あぁ―――もう! わかったよ!」





そんなわけで……。

俺たち3人は一緒に寝ることになってしまった。




「電気消すぞー」

「は、はい!」

「対GスプレーOKだよ!」



 電気を消して薄暗い部屋の中、なんとか無事にベッドに横になった。



「狭くね?」

「……暖かいです」

「お兄ちゃん、もうちょっと詰めてよ」



「うぉっ!? 押すなよ!?」

「――――ひゃぁ!?」

「あれ、なんかまずかった?」



「ベッドが狭いんだよ! 理香、嫌なら部屋に戻れ!」

「――――せいじっ、ダメっ!?」

「そうだよ、仲間はずれダメだよ!」



「ちっ、仕方ない。……てか、なんだコレ?」

「あぅぅ~~……」

「ああっ!? お兄ちゃんドコ触ってるの!?」



「ん、理香のほうは肩が当たってるだけだろ?」

「ふぁぁ……」

「ユキだよユキ! 私が一旦降りるから離れて!」



「うおっ!? わかった!」

「……」

「ユキ、大丈夫!?」



「…ユキ?」

「お嫁にいけないです……」

「何したのお兄ちゃん!?」



「え、何か柔らかい―――ああっ!? スマン!」

「…ぐすっ」

「お兄ちゃんの変態!」



「…返す言葉もない」

「あっ!? そ、その…! ビックリしただけです!」

「大丈夫だよ、ユキ! ダメだったらお兄ちゃんがお嫁にしてくれるよ、責任とって!」



「――――――んな!?」

「――――――ふぇっ!?」

「……ひょっとして満更でもない?」



「……理香よりはな」

「―――えっ!?」

「うわっ、酷い!」



「ああもう! 寝るぞ! 早く寝ない子にはGが来るぞ!」

「……」

「え、縁起でもないこと言わないでよ!?」








「もう、寝ちゃいましたか…?」



「いや、起きてるけど……。理香は寝たっぽいな」

「そう…ですか」



「あー、さっきはごめんな?」

「…大丈夫です。そもそも私みたいなヘンな子はお嫁にいけないですし……」



「……そんなことは無いと思うけどな」

「でも……。誠司も遠慮してただけで私みたいな子は嫌ですよね…?」




「……別に嫌じゃないさ。嫌だったら連れ帰ったりしないよ」

「誠司は、いつも迷子を拾ってるんじゃないんです…?」



「そうだなぁ……。ユキが最年長だよ、おめでとう」

「うぅ~……やっぱり私って子どもっぽいです?」



「…けっこう」

「あぅ……」



「あー、でも裸は見た目より――――」

「―――――っ~~!?」



「……悪い。忘れてくれ」

「……ひどいです」




「まぁでも、見た目は気にしなくていいんじゃないか?」

「ちっちゃいことです…?」




「…いや、その髪。綺麗だと思うよ」

「――――ぇっ!?」




「うわっ、恥ずかしい!? 俺も寝る!」




「……ありがとうございます」



「…ああ」









「誠司……、もう寝ちゃいましたか?」




「…不思議です。まだ、会ったばかりなのに――――……」




「私は―――……」





 ほとんど眠りに落ちていた俺には、囁くようなユキの声は届かなかった。







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